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外囿祥一郎 ユーフォニアムリサイタル
in みなとみらい

◎冒険家のように飽くなき探究心を持って
 常に新境地を開拓し続ける外囿氏を応援し続けたい!

「ユーフォニアム」という楽器の名前すら聞いたこともなかった私が、外囿祥一郎氏の奏でる温かく澄んだ音色に取り憑かれている。紅葉に燃える山々のように表情豊かで変化に富んだ音が柔らかく心地よいのだ。

 その音色を聴くたび、ふと私の心は30年前にタイムスリップしてしまう。不安いっぱいで転校した先の長崎県対馬の小学校で、毎朝流れている曲があった。それがモーツアルトの「ホルン協奏曲」。朝一番で耳にする牧歌的な旋律は、緑に囲まれた木造校舎の情景と共に今でも鼓膜の奥に刻み込まれている。

 私は土地の言葉に馴染めず、聞く耳は疲れ果てて心を閉ざしかけていたが、そんな時、優しく語りかけてくれたのは先生でも両親でも友達でもなくホルンの音色だった。来る日も来る日もビビッドな旋律に心叩かれるうちに、耳は研ぎ澄まされ、言葉を取り戻し、失語症から立ち直った。音楽の効果は計り知れない。

 そのビビッドな吹き振りが誰のものであったのか、36歳で夭折した英国の天才ホルン奏者のデニス・ブレインと知ったのは最近のことだ。

 音そのものは柔らかいのに、切れと鋭さがあってパワフル。外囿氏の奏でる万華鏡のように鮮やかで心打つ音色に触れるたび、ブレインの思い出が蘇る。

 速くて起伏に富んだ曲はピアノやバイオリンで簡単に弾けてもユーフォニアムで吹き切るのは極めて困難。そんな「吹奏楽器ではあり得ない」難曲の数々を見事に紡ぎ出してしまうのはブレイン同様、外囿氏のなせる天性の業だろうか。
 ずば抜けた肺活量に安定した息継ぎ、衰えないピストンワーク、美しいビブラートに今回も感服させられた。

 個人的にお気に入りはアンコールの定番となったハンガリーの「チャールダッシュ」だが、これぞ彼の真骨頂だと確信する。ファンの一人として、いつかハンガリーやルーマニアの弾むような民族舞曲にも挑戦してもらいたいと切望している。

 航空中央音楽隊に所属し、世界的に活躍中の外囿氏だが、ブレインも大戦中、英国空軍バンドに所属していたというのは面白い偶然だ。冒険家のように飽くなき探究心を持って常に新境地を開拓し続ける外囿氏の今後の益々の活躍を応援したい。

■外囿祥一郎公式HP
http://homepage1.nifty.com/hokazon/



 


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