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川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団
25周年記念 第32回定期演奏会

◎真島俊夫の「鳳凰は舞う 印象、祇園、龍安寺の石庭、金閣寺」(世界初演)は、芸術的にも音楽的にも完成度の高い、すばらしい演奏だった!

 例年以上に冬が長く感じるうえに、寒さが厳しい年末の12月23日の天皇誕生日に、川口リリアメインホールにおいて開催されました「川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団 25周年記念 第32回定期演奏会」に行って参りました。
 今回は25周年の記念演奏会ということで吹奏楽界を代表する作曲家・真島俊夫氏に作品を委嘱、今回世界初演されることや、陸上自衛隊中央音楽隊・副隊長の武田晃氏を客演指揮に招き、また、地元川口市を拠点に活動されている「和太鼓翔」のゲスト出演など、とても盛りだくさんな内容になってました。

 まずは演奏会の模様をお伝えする前に、皆さんよくご存知だとは思いますが、ここで改めて川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団についてご紹介したいと思います。
 1980年に創団され、今年で25年周年を迎えられました。1990年に全国大会に初出場してから15年を迎えた2005年も11回目の全国大会出場を果たされた歴史・実力共に兼ね備えているバンドです。
 団員相互の親睦と音楽技術の向上を目指し、地域社会の文化発展に寄与することを目的としており、年2回の定期演奏会、コンクールをはじめ、ボランティアや依頼演奏等の演奏活動の他に、川口市内の中学校への指導も行っています。
 常任指揮者に昭和音楽大学吹奏楽指導講師の福本信太郎氏を迎え、川口市立十二田中学校・卓球室にて練習されています。2005年12月現在、吹奏楽コンクール埼玉県大会において、16回連続“金賞”の快挙を成し遂げ、西関東大会では16回連続17回出場し“金賞13回”及び“銀賞4回”受賞、全国大会へな7回連続11回出場し、“金賞8回(最高得点1位3回)”及び“銀賞3回”を受賞するなど、素晴らしい一般バンドの1つです。

 演奏会は3部構成で、第1部は「客演指揮に武田晃氏を迎えて」、第2部は「西関東アンサンブル・コンテスト出場チームと、ゲスト『和太鼓 翔』の演奏」、第3部は「真島俊夫プログラム」と、盛りだくさんの内容となっておりました。それでは早速、演奏会にふれてみたいと思います。

 第1部は、陸上自衛隊中央音楽隊・副隊長の武田晃氏の客演指揮による演奏です。

 まず最初の曲は、L.ガンヌ作曲《ロレーヌ行進曲》です。
 トランペットの華やかなファンファーレから始まる、テンポ感の良い華々しいマーチです。力強い金管の音量と豊かな音色、迫力のある打楽器がとても素晴らしく、自衛隊の武田氏ならではのマーチの解釈というものが、さらに作品の魅力を引き出していたと思います。25周年の記念演奏会のオープニング飾るに相応しい作品と演奏でした。

 2曲目は、J.オッフェンバック作曲《喜歌劇「天国と地獄」序曲》です。
 この作品は、運動会などでよく使われているのでお馴染みですね。今回は八木澤氏のアレンジによるもので、武田氏の所属されている陸上中央音楽隊の委嘱により編曲されました。トロンボーンなどの中・低音域の厚いサウンドは、原曲を損ねることなく、実に見事なアレンジでした。
 バンドの一人ひとりの技術が高いので、オーボエ、クラリネット、ユーフォニアムそれぞれのソロ、またハープやフルート、コントラバスなど+木管楽器群の室内楽的なサウンドが印象的で、とても心地よく聴けました。作品のやわらかい部分と躍動感のある部分のコントラストが素晴らしく、とてもメリハリある素晴らしい演奏で聴衆を圧倒していました。

 3曲目は、P.グレインジャー作曲《デリー地方のアイルランドの調べ》です。
 このタイトルだとどのような曲かわかりにくいと思いますが、「ロンドンデリーの歌」と聴けば皆さんおわかりになるかと思います。
 イングリッシュホルンが活躍するこの曲は、先ほどの《天国と地獄》とは雰囲気がガラリとかわり、曲全体がやわらかいハーモニーと、しっとりと歌い上げるメロディーが、演奏するうえで鍵になってきます。リベルテの中低音域層の充実したサウンドと、心に響き渡る美しいメロディーを演奏する楽器とのハーモニーは、私たち聴き手を魅了させました。

 1部最後の曲は、A.リード作曲《交響曲第4番》です。
 この作品は1993年にオランダで開催された第12回国際音楽コンコール(WMC)のために委嘱されました。作品は「エレジー」「インテルメッツォ」「タランテラ」の3楽章からなっています。
 実は客演指揮の武田氏は、リード作曲の《アルメニアンダンス》の初演時のトランペット奏者として参加されておられるというエピソードも披露され、リード氏への想いと追悼の意を込めて演奏されていました。
 1フレーズを表現する難しさや、やわらかいサウンドなど、各楽章の決めどころで確実に素晴らしい演奏をされており、特に第3楽章は1度演奏が始まったら決して流れがとまることのない作品ですが、緊張感やスピード感が途切れることのない素晴らしい演奏で、第一部が締め括られました。


 休憩を挟んで第2部は、「西関東アンサンブルコンテスト出場チームの演奏と、スペシャルゲスト「和太鼓 翔」の演奏です。

 今回は西洋と日本のそれぞれのアンサンブルを楽しむことができるステージになっておりました。やはり両方とも共通していることは、「和」を大切にすることで、1つの作品がより素晴らしい演奏になるということを改めて感じました。
 吹奏楽とは一味違う、人数の少ないアンサンブルではありますが、各チームともダイナミックな演奏が展開されていました。

 1組目は、田村文生作曲・木管打楽器八重奏《アンサンブルのための歪められた歌》(委嘱作品)です。今回のアンサンブル・メンバーがみんなで委嘱料を出し合い、田村氏に委嘱した、想いのこめられた作品と演奏でした。
 無調・音列による作品で、音を細分化、あるいは塊、あるいは断片化しつつ、それらを「静と動」で表現していてます。全体的に休符・呼吸のタイミングが難しい作品で、特にパーカッションの音の処理が難しく感じましたが、メンバーの高い集中力や技術により素晴らしい演奏をしていました。

 2組目は、E.ボザ作曲・金管五重奏《ソナチネより III、IV》です。
「III」はリズムの間の取り方、それとは対極的な細かいパッセージがある作品で、そのコントラストを表現する難しさを持った作品、「IV」は半音階のスケールの多い作品で、縦の線を合わせるのはとても難しいなぁだと思いました。メンバーの皆さんは各楽章とも、とても細かく練習されており、心地よい緊張感の中、楽しくアンサンブルをしていました。

 3組目は「和太鼓 翔」による演奏です。
 ここで「和太鼓 翔」について少々ご紹介したいと思います。
 1996年、和太鼓の魅力に惹かれたメンバーにより結成され、和太鼓を通じで大きく羽ばたいて行こうと「翔」と命名されました。97年に川口市で開催された「初午太鼓コンクール」に初参加で上位入賞を果たし、翌年優勝という輝かしい成績を収められています。
 1999年からは津軽三味線とのコラボレーション「津軽の鼓動」に参加。国立劇場を始め、日比谷公会堂、両国国技館、NHKホール等にて、2001年には中国北京にて演奏するなど精力的な演奏活動を行っています。

 1曲目は《幸香(さちのか)》です。
 メンバーの結婚を祝い、幸せの香のおすそ分けに作られた作品です。音色がやわらかい感じで、暖かさにあふれた作品と演奏だったと感じました。

 続いて2曲目は《路の跡(みちのあと)》です。
 和太鼓奏者の林田博之氏が作曲された作品で、かつぎ桶太鼓で演奏するグループ感溢れる作品です。躍動感溢れる演奏で、私はタイトルよりも前向きな感じがしました。

 最後の作品は、《NATU-TA(なつうた)》です。
 軽快なリズムで展開していき、ソロ・パートでは個性がぶつかり合う、お祭りさわぎなオリジナル作品です。タイトルの通り「夏」をイメージしている作品のようで、夏祭りの縁日の様子などが思い浮かんできました。

 会場からの沢山の拍手により、第2部のアンコールとして「和太鼓 翔」と「リベルテ」とのコラボレーションが実現し、《八木節》が演奏されました。吹奏楽に和太鼓が加わることによって、吹奏楽だけでは出ないサウンドを実現させ、さらに迫力のある《八木節》を聴くことができました。


 休憩を挟んで最後、第3部は日本を代表する作曲家・真島俊夫氏の作品プログラムの演奏です。

 まず最初の曲は《三日月に架かるヤコブのはしご》です。
 華やかに始まるこの作品は、関西学院大学の委嘱作品です。木管とパーカッションとのアンサンブルがある部分を経て、イングリッシュホルンの美しくしっとりしたソロが出てきます。イングリッシュホルンのソロはもちろんのこと、金管・特にホルン・トロンボーンの難しく厳しい部分がありますが、流石はリベルテ!と言わせる素晴らしい演奏で第3部の幕があがりました。

 2曲目は《コーラルブルー 沖縄民謡「谷茶目」の主題による交響的印象》です。
 この作品は皆さんご存知の通り、1991年の全日本吹奏楽連盟の課題曲になった作品です。タイトルの通り沖縄の雰囲気をたっぷりもった作品で、南国情緒あふれるのんびりした部分と活発な部分とが交互に出てきます。ラストのベルトーンが決まるととてもかっこいいです。リベルテのメンバーも会場も懐かしい気持ちで一杯になったと思います。

 3曲目は《鳳凰は舞う 印象、祇園、龍安寺の石庭、金閣寺》(25周年記念委嘱作品・世界初演)です。

 本日の演奏会のメイン作品であるこの作品は、リベルテ創団25周年の記念作品として真島氏に委嘱され、作曲されました。

 当日のプログラムノートによると
「私はよく、ぶらりと京都に立ち寄ります。そして湯豆腐で酒を飲りながら、日本庭園や竹林を眺めて様々な思いをめぐらせるのが好きです。それは普段の忙しさから解き放たれ、何か心が静まるような、浄化されるような気持ちになります。春の桜、晩秋の燃え立つ紅葉、竜安寺の石庭、そして池に映る金閣寺等の美しさには涙が出るような感動を覚えます。そして都の華やかさにも心が惹かれます。これらの印象を音にしたのが、この曲です」と述べられています。

 タイトルの通り京都・日本調サウンドをもった作品で、チェレスタ+ハープ+ホルンの響きにコントラバスのバルトーク・ピッチカートが彩りを添えられていきます。
 それぞれの場面(副題)を繋ぐ役割として、京都の優雅さを表現するためにチェレスタ+ハープのアンサンブルが多用されていたのが特徴です。そして、そのアンサンブルに溶け込むように、場面のイメージに合う楽器のソロ等が加わりながら展開していき、緊張感につつまれながら曲が進んでいきます。
 委嘱作品を初演するという事とは、精神的な面をもの凄く必要としますが、しかし流石ははリベルテ。舞台から伝わってくる集中力と緊張感によって奏でられた音楽は、芸術的にも音楽的にも完成度のとても高い演奏で、本当に感服致しました。素晴らしかったです!

 最後の作品は《美しき二つの翼》です。
 実はこの曲の原曲は「フルートとアルト・サックス+ピアノのために書かれたボサ・ノバの曲」ですが、NEC玉川吹奏楽団の委嘱により吹奏楽編成に書き直されました。しかし、原曲の室内楽的な発想が大編成に合わないことに気づき、結局メロディー以外は全く新しい作品になったそうです。
 冒頭は吹奏楽らしいサウンドを保ちつつ、徐々にサウンドとサックスを始めとするスタンドプレイなどにより、ボサ・ノバの雰囲気がより鮮明になります。ただ、使われているハーモニーやサウンドが真島氏独特のものなので、各楽器にソロや見せ場がある難しい作品を、見事にしっとりと歌い上げたリベルテの皆さんは、本当に素晴らしかったです。
 特に曲の最後にあるドラムスのソロ・カデンツは迫力のある演奏があまりにも見事にきまり、割れんばかりの拍手に包まれました!

 客席からの沢山の拍手に応じて、アンコール3曲が演奏されました。
 2曲目の真島俊夫作曲の《シーガル》の時には、なんと常任指揮者の福本氏のサックスのソロを聴くことができました。美しくもの悲しいメロディーをしっとりと演奏されていて、会場の皆様の一足早いクリスマス・プレゼントになったのではないでしょうか。流れる演奏会終了のアナウンスが、名残惜しさをより一層感じさせる演出のまま、幕を下ろしました。

 一般団体だけでなく吹奏楽界のけん引役の1つを担うリベルテ。邦人作曲家の委嘱作品を始め、オリジナルからアレンジ作品まで幅広く、そして意欲的に取り組んでいる素晴らしいバンドだと思います。
 今後も、常任指揮者である福本信太郎氏の下で、指導を受けそして練習を重ね、さらなる飛躍を楽しみにしています


川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団HP
http://www.asahi-net.or.jp/~gx7m-skmt/

和太鼓 翔
http://www.tcat.ne.jp/~shou.net/


■プログラム

第1部/客演指揮:武田 晃(陸上自衛隊中央音楽隊・副隊長)

○ロレーヌ行進曲/L.ガンヌ
○ 喜歌劇「天国と地獄」序曲/J.オッフェンバック(Arr.八木澤 教司)
○ デリー地方のアイルランドの調べ/P.グレインジャー
○ 交響曲第4番/A.リード

第2部/西関東アンサンブルコンテスト出場チームの演奏
    スペシャルゲスト:和太鼓 翔

[木管打楽器八重奏]
○アンサンブルのための歪められた歌(委嘱作品)/田村 文生

[金管五重奏]
○ 「ソナチネ」より III、IV/E.ボザ

[和太鼓 翔]
○幸香(さちのか)
○路の跡(みちのあと)
○ NATU-TA(なつうた)

[アンコール]
○ 八木節(和太鼓 翔とリベルテのコラボレーション)

第3部/真島俊夫プログラム

○三日月に架かるヤコブのはしご
○ コーラルブルー 沖縄民謡「谷茶目」の主題による交響的印象
○ 鳳凰は舞う 印象、祇園、龍安寺の石庭、金閣寺
  (25周年記念委嘱作品・世界初演)

○美しき二つの翼

[アンコール]
○ そりすべり/アンダーソン
○ シーガル/真島俊夫
○ ベイ・ブリーズ/真島俊夫


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