吹奏楽マガジン バンドパワー 吹奏楽マガジン バンドパワー
広告について >>詳細
吹奏楽マガジン バンドパワー
レポート >> レポートインデックス

寺田由美マリンバ&パーカッションリサイタル

日時:2005年9月21日(水)19:00〜
場所:かなっくホール
レポート:織茂 学(ピアニスト)
http://www.k3.dion.ne.jp/~m-orimo/
◎アンサンブル・コンテストに使える
  パーカッションの新レパートリーがいっぱい!
 9月21日(水)、神奈川県にある、かなっくホールにおいて開催された「寺田由美マリンバ&パーカッションリサイタル」に行って参りました。
 今回のプログラムはマリンバを始めとしたパーカッション・アンサンブルの演奏会で、第2部では若手邦人作曲家5人による新作が並び、アンサンブル・コンテスト(以下アンコン)に効果的であることを意識した作品の演奏が行われました。

 まずは演奏会の模様をお伝えする前に、今回の第2部の演奏会の企画ついて改めてご紹介したいと思います。
 今回作品を書くにあたり「通常一般的にバンドが所有しているであろう楽器を中心に、人数を3〜5人で演奏する事ができ、作曲者の想いを込めた部分をカットすることのないように5分以内の作品」という条件で作曲されています。何より、技術的・音楽的に楽しく演奏ができ、なおかつ芸術性の高い作品を紹介していくのが今回のコンセプトです。

 演奏会は2部構成で、第2部は寺田さんが進行も務め、各作曲家による作品解説等のお話を交えながら進んでいきました。では、さっそく演奏会にふれてみたいと思います。

 第1部、最初の曲は、林光作曲《2台のマリンバのためのコントラスツ》です。
 この作品は、1965年10月26日に初演されています。4度音程の構成を持つ神秘的な音使いの作品で、演奏は2人の奏者の呼吸によってかなり左右させられる作品だと思います。
 厳かな雰囲気の中から徐々に力強い動きをともなって、クライマックスを迎えます。ホールは満席で、演奏が開始しても客席がなかなか落ちつかなかった事もあり、2人のマリンバの雰囲気がかもしだす音楽はやや硬かい感じがしましたが、今日の演奏会の方向性を決定づける演奏でした。

 2曲目は、横山菁児作曲《2台のマリンバのための喜遊曲》です。
 調性感を持ったこの作品は3楽章形式の作品です。どちらかのパートが伴奏に徹することなくメロディーを交互に掛け合いながら、ある時はメロディーを引き立てたりと、合わせるのが難しいですがバランス良く進んでいくため、演奏していて楽しい作品だと思います。特に2楽章はゆっくりな短調の作品で、マリンバの音色がもの凄く際立つ作品です。
 全楽章通して、時には華やかに、時にはしっとりという作品でしたが、ホールの残響の関係なのか、メロディー・ラインが埋もれ気味になっていたのが残念でした。

 第1部最後の作品は、安倍圭子作曲《タンブラン・パラフレーズ〜2台のマリンバのための〜》です。
 音域5オクターブのマリンバを使用し、重厚な響きがする低音域に加え、変拍子やマレットを鍵盤に押しつけて響きを止める奏法、マレットの柄の部分で鍵盤や柄同士を打つ等の特殊奏法によって、マリンバの魅力を最大限に引き出している作品で、わかりやすいメロディーに不思議な響きのするハーモニーを持ち、聴き手をひきつけます。
 プログラムノートに「高度な技術にとらわれず動きを持った表現する」と書いてありましたが、寺田さん、天明さんのようなプロの方々でも、もの凄い緊張を感じさせる演奏でした。


 休憩を挟んで第2部は、今回のメインプログラム、若手邦人作曲家5人による新作の演奏が行われました。2部は皆さんが特に気にされていると思います、作品の事を中心に書いていきたいと思います。

 最初の曲は、石毛里佳作曲《Fireworks(花火)》です。
 日本の和太鼓のようなリズムを使用し、和のテイストを持った作品です。プログラムには「花火そのものよりも、花火大会などのお祭り騒ぎのイメージで作曲されています」と書いてあるのですが、演奏を聴いた感じでは、お祭り騒ぎのイメージというよりは、夏休みの思い出に花火大会などのお祭り騒ぎがあったなぁと、回想する様子を表現している様に感じました。
 つまり、決して皮モノをボコボコ叩いているだけの音楽ではなく、しっとりと歌うメロディーの部分も伴った作品です。
 アンコン等で演奏するにあたり、奏者側で曲の頂点を決め、特に強弱に関してメリハリのある演奏を心がけると良いと思います。技術的なことはそこまで難しくはないので、より音楽的な表現を求められる作品かと思います。

 2曲目は、神長一康作曲《アリオーソV》です。
 タイトル通り「アリオーソ=歌うように」という、神長氏の作品の大きな特徴になっている叙情的なメロディーを持つ作品です。ただ中間部の始まりに、ボンゴとコンガの皮モノがソロで出てくるのですが、作品の流れから感じるとやや不自然な感が否めないです。
 また、減音程を伴うハーモニーが美しいメロディー中に出てくる、つまり美しさの中におどろおどろしい雰囲気を持ちあわせる、何か不思議な感覚に陥る作品でした。
 どちらかと言うとアンコン向けでなく演奏会向けの作品で、演奏会や幕間にて演奏するには良い作品だと思います。

 3曲目は、高橋宏樹作曲《4人のパーカッショニストのための「ノームの森の物語」》です。
 ストーリーを持ったこの作品は、場面を4つ、それぞれ1分程度の規模に分けて作られています。高橋氏らしいかわいらしく親しみやすい作品なので、曲の頂点や聴かせどころを作りやすく、また技術的にはあまり難しくないので、幅広い年齢層で演奏可能だと思います。もちろん、年齢が上がるにつれて求める内容や技術・音楽性を突き詰めていく必要があると思います。
 アンコンでも効果を発揮できる作品です。やはりこの作品もより音楽的な表現を必要とする作品だと思います。

 4曲目は、福島弘和作曲《雨の音楽会〜5人の打楽器奏者のための〜》です。
 全体的に印象派風の音楽で、耳に優しい作品になっています。冒頭と曲の最後に出てくるテンプルブロックを中心として表現している「雨音」の部分の演奏は、奏者の呼吸に任せているので、初演の演奏時間は5分より少し長くなっていましたが、とてもよい雰囲気を作り出している演奏でした。
 中間部は当日作曲者も話していましたが、前後の作風とは一変してほぼ別の作品の様に感じました。技術的にはやや難しく、呼吸の部分とスピードの部分とのメリハリを求めている作品です。
 アンコンで演奏する際は、演奏時間の問題から、作曲者によるカットを楽譜の問い合わせの際に、聴いてみることをおすすめします。

 最後の作品は、八木澤教司作曲《バッカナール》です。
 今回の企画に加え、現場での声を考慮し、ティンパニやバスドラム等の大きい楽器を使わないというコンセプトを、八木澤氏自身で決めて作曲されたようです。
 曲の冒頭は5度音程を基として作られており、響きが中近東のような響きを持った不思議な雰囲気から始まり、その後、調性感を伴いながらノリの良いテンポになります。
 2、3箇所ほど低音皮モノによるアクセントが欲しいところがありますが、楽器の音量だけではない音楽としての強弱のメリハリがありました。技術的にもあまり難しくないので、メロディー・ラインとその他のバランス等に気を配りながら練習を積むことで、音楽的にも十分表現しやすい作品だと思います。
 アンコンにおいてもかなり演奏効果が期待できる作品だと思います。

 アンコールでも素敵な演出が施されて、演奏が終わるにつれて舞台が暗転し、フェイドアウトしていく感じで演奏会が終了しました。

 邦人作曲家のパーカッション・アンサンブル新作初演がふんだんに盛り込まれた、教育的な活動をされている寺田さんならではの、とても画期的な演奏会でした。
 作曲家に新作を依頼した場合、譜面が到着するのが遅くなることがしばしばあります。ですが、プロは本番まで少ない日にち、たとえ前日・当日であっても演奏しなければなりません。今回もそのようなご苦労が感じられました。
 当日舞台で寺田さんが「中高生の皆さんが毎日時間をかけて一生懸命練習した成果を、アンコン等で聴ける事をとても楽しみにしています」と仰っていたように、今後はこの企画で生まれた新レパートリーの素晴らしい熱演が誕生することと思います。5人の作曲家はもちろん、この企画に携わった方々、そして私も含めその日を楽しみにしております。

 今回、大編成でないアンサンブル作品という事で、特徴が良くわかるとても楽しい演奏会でした。このようなコンセプトの演奏会が今後、さらに発展していくことを節に望みます。

なお、これらの作品は寺田由美さんのHPにて入手方法がご案内されています。
http://www.terada-yumi.net/gakufu.html

■寺田由美HP
  http://www.terada-yumi.net/


■ プログラム

第1部/演奏:寺田由美・天明さおり マリンバデュオ

・2台のマリンバのためのコントラスツ/林 光

・2台のマリンバのための喜遊曲/横山 菁児

・タンブラン・パラフレーズ〜2台のマリンバのための〜/安倍 圭子


第2部/演奏:寺田由美パーカッション・アンサンブル「ドライヴ」

・Fireworks(花火)/石毛 里佳

・アリオーソV/神長 一康
  http://www.kaminaga-web.com/

・4人のパーカッショニストのための「ノームの森の物語」/高橋 宏樹
    森へ〜三日月の晩に〜狩〜森の小人たち
  http://hirokimagic.hp.infoseek.co.jp/

・雨の音楽会〜5人の打楽器奏者のための〜/福島 弘和
  http://www1.odn.ne.jp/maurice-ravel/fh-profile.html

・バッカナール/八木澤 教司
  http://www.horae.dti.ne.jp/~yagisawa/home/

アンコール
・夕焼け小焼け(Solo Marimba)/草川 信

>> レポートインデックスページに戻る
吹奏楽マガジン バンドパワー
演奏会AD
 
 
 
jasrac番号 吹奏楽マガジン バンドパワー