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テュービアム・コンサート vol.4

日時:2005年4月25日(月)19:00〜
場所:横浜みなとみらいホール 小ホール
レポート:織茂 学(ピアニスト) 
URL:http://www.k3.dion.ne.jp/~m-orimo/
◎バリチューの発展に欠かせないこの演奏会は、常に注目です!
 4月25日(月)に横浜みなとみらいホールにおいて開催されました「テュービアム・コンサート vol.4」に行ってまえりました。今回のプログラムは邦人作品ばかりを集めた演奏会で、普段、大編成でしかなかなか触れることの出来ない作曲家のバリ・テューアンサンブル作品が初演も含め9作品で構成され、さらに作曲者の解説が直に聴ける、かなりお得な演奏会でした。

 まずは演奏会の模様をお伝えする前に、テュービアムについて改めてご紹介したいと思います。2001年に作曲家の戸田顕氏の発案により結成されたアンサンブルです。
「TUBIUM」とはTuba(テューバ)とEuphonium(ユーフォニアム)の2つを合わせた造語で、音楽監督の戸田顕氏が考案した名称です。年一回の自主公演の他、依頼演奏やゲスト出演など、様々な演奏活動を行っています。

 演奏会は2部構成で、音楽監督の戸田氏の司会による作曲家の皆さんに作品解説やインタビュー等のお話を交えながら進んでいきます。では早速、演奏会にふれたいと思います。


 第1部最初の曲は、高橋宏樹作曲《ノビルメンテ》です。
 2005年度全日本吹奏楽コンクール課題曲《ストリート・パフォーマーズ・マーチ》の作曲家です。作曲者自身、英国風な作風が好きと仰っていらっしゃる通り、暖かみのあるメロディーとハーモニーを持ったお洒落な作品です。
「急−緩−急」それぞれメリハリのある演奏で、細かいパッセージなど1つ1つきちんと演奏されていました。Euph.3 Tuba.3とやや大きな編成ですが、親しみやすい作品ですので、メンバーが集まるようでしたら演奏してみてはいかがでしょうか。

 2曲目は、八木澤教司作曲《バリ・テューバ四重奏曲「エスメラルダ」》です。
 自身2作目となるバリ・テューアンサンブル作品です。エスメラルダとは「16〜17世紀に栄えた美しい音楽」と言う意味だそうです。甘くやわらかいメロディーの“緩”と速いパッセージの部分“急”が交互にあり、最後は“急”で終わります。
 昨年の演奏会で演奏された《ラプソディー》に比べると、技術的に少しやさしい作品になっています。音楽性を養う導入作品として取り組むには良い作品だと思います。

 3曲目は、侘美秀俊作曲《マリーナの小径》です。
 作曲者自身ユーフォニアムを専攻されており、楽器を知り尽くされているため、オーケストレーションや音域など安定感のある作品です。作品は3つの小品からなる組曲で、それぞれ、1.「朝凪のプロローグ」2.「ウェディング・バラード」3.「夕凪のスケルツォ」とタイトルが付けられており、1つ1つの作品が重すぎず、親しみやすいメロディーやハーモニーを持たせています。
 プログラムノートによると、特に2楽章は「委嘱元のメンバーへ結婚のお祝いを込めて、感情たっぷりの子洒落たバラード風にしました」と書かれている通り、暖かさが伝わるメロディーで、幸せのおすそ分けをしてもらった感じがしました。
 1曲目のテーマが拍子を変えて3曲目で再現することで作品の統一感を持たせていますが、途中同じ事が繰り返されることがあり、少々長く感じてしまうのが残念でした。

 4曲目は、清水大輔作曲《「乱反射」〜2人のユーフォニアム奏者と2人のテューバ奏者の為に〜》です。
 この作品は、プロであるテュービアムのメンバーでも演奏するにはあまりにも難しいため、作曲者自身が指揮をすることによって演奏されました。『乱反射』という言葉から、音が自由に飛び散る感じや不規則のリズム、音の密集や広がりなど、偶然的に組み合わせてみた作品です。
 清水氏は「一旦4/4で書いたものを断片化、拍子を細分化し不均衡なものを作るための準備をし、それらを作曲者自身のセンスにより、ちりばめて完成させた」と仰っていました。今回の作品は、楽譜に音が書かれている上に無秩序なため、やや偶然性がわかりにくくなっているのが残念でした。やはりある規則性と秩序に従って音がちりばめられている事が必要だと思います。ですが、作曲者のこの試みは良いことだと思います。

 第1部最後の作品は、戸田顕作曲《ルースス》です。
 戸田氏自身も、先に演奏された侘美氏と同様ユーフォニアムを専攻し、楽器を知り尽くされているため、オーケストレーション等、安定感のある作品です。「ルースス」とはラテン語で遊びという意味を持っています。プログラムノートに「『遊び』・・・なかでも子供の頃に楽しんだ『遊び』は懐かしく、大切な思い出のひとつになっていると思います。『遊びの中』で、笑ったり、泣いたり、興奮したりする色々な顔が、演奏と共に走馬灯のように心を駆け巡めぐる事ができれば嬉しいです」と書かれています。
 作品は「急−緩−急」で、音域はやや広めで各パートそれぞれに難しいパッセージが用意されており、この曲に取り組む事で奏者のレベルアップを臨むことが出来ると思います。


 休憩を挟んで第2部の第1曲目は、神長一康作曲《Prelude and Fugue》です。
 プレリュードについてはフーガに比べて制約がない分、ゆったりと作曲者自身、自由に書かれた作品だと感じましたが、フーガに関しては、フーガ独特の主題の展開や音の処理等が書ききれておらず、フーガと呼ぶには少々難しい作品でした。
 バリ・テューアンサンブルにおけるフーガは、音域と音色に問題がある分、かなり難しいものだと言う事を改めて感じました。

 2曲目は、鈴木英史作曲《Cancion de Cisne -a Floresta》です。
 この作品は鈴木氏が23歳の時の作品で、高校の後輩の突然の死の追悼のために書かれた作品です。プログラムノートには「希望に満ち溢れた人生が道半ばにも至らずに絶たれた口惜しさから、彼に代わって、夢に進む姿、悩み、喜びが大きい恩寵に取り込まれていくまでが描かれています。天に上り行く姿を描くのに、Euph-Tuba Quartet はこの上なく素晴らしい響きを与えてくれます」と書かれています。
 舞台で自分の作品について「何も変わっていないなぁ」と仰っていました。これは昨年の私のリサイタルの際にも仰っていました。私は、頭で考えるのでなく、精神で感じる作品なのかなと思いました。作品はもとより音楽的かつ神秘的な素晴らしい演奏でした。

 3曲目は、篠原敬介作曲《4本のテューバのための「クルシブル」》です。
 タイトルでは「4本のテューバ」と書いてありますが、今回の編成は「Euph.1Tuba.3」で演奏されています。プログラムノートに「形式はA-B-Aで、アンサンブルの新しい方向を模索しようとした作品だそうです。
 テューバアンサンブルを作曲するにあたり、数多くの制約に悩まされるのも常であり、その運動性、音域、隣接する音の響きにくさ等、この種の作品の数が乏しいのも、これらが原因かもしれません」と書かれています。これらのことから、やや実験的に書かれたこの作品は演奏するには難しくなってしまったために、「クルシブル(Crucible)=過酷な試練」と名題したそうです。速く細かいパッセージはそれほどありませんが、違う面での技術的な難しさと音楽性が作品を引き締め、格好よい作品になっています。

 最後の作品は、天野正道作曲《Trois Pieces》です。
 この作品は「彩たま低音's倶楽部」の委嘱作品です。4つのユーフォニアム(バリトン持ち替えあり)と2つのテューバのための六重奏です。今回はテュービアムの編成に合わせて、4番ユーフォをテューバで演奏していました。
 作品は3つの小品でできており、1曲目はファンファーレ風で、冒頭の主題が終わると、不思議なハーモニーやメロディーの掛け合いが続き、再び冒頭の主題が出てきて終わります。2曲目はテンポはゆっくりで、ユーフォニアムがしっとりとメロディーを歌い上げる作品です。ハーモニーパート、特に内声の経過音や逸音などのパートは、音程や歌い方のタイミングに高度な事が要求されると思います。3曲目は軽快なテンポの爽やかな作品です。やはりこの作品も中間部はしっとりと歌い上げる作品です。3作品ともA-B-Aの形式で書かれており、分かりやすい作品です。

アンコールも2曲演奏され、とても豪華な演奏会でした。

 バリテューアンサンブル。作品を書く上で、色々と制約があるであろう2つの楽器同士のアンサンブルは、技術的にも音楽的にも、もちろん演奏することは難しいと改めて感じましたし、それぞれの楽器の音色に変化をつける事がとても難しいと感じました。

 しかし、テュービアムの皆さんは、そのパイオニアとして、全ての作品の良いところを引き出し、そして効果的に演奏されていたのは、本当に素晴らしいと思います。また今回のオール邦人プログラムという特殊なプログラムでは、技術、音楽性、それに音色という事だけでなく、精神的な面も細かくコントロールすることが要求されると思いますが、舞台では余裕を感じさせつつ、引き締まった素晴らしい演奏でした。

 次回は記念すべき第5回目の演奏会です。HPに5周年企画も予定されているとの事なので、楽しい企画と素晴らしい演奏を期待しています。バリチューの発展には欠かせないこの演奏会は注目です。


【プログラム】

第1部

・ノビルメンテ(初演)/高橋 宏樹 (Eup.3 Tub.3)
  http://hirokimagic.hp.infoseek.co.jp/

・バリ・テューバ四重奏曲「エスメラルダ」(初演)
  /八木澤 教司 (Eup.2 Tub.2)
  http://www.horae.dti.ne.jp/~yagisawa/home/

・マリーナの小径/侘美 秀俊 (Eup.2 Tub.3)
  http://www.linkclub.or.jp/~takumi

・「乱反射」〜2人のユーフォニアム奏者と
  2人のテューバ奏者の為に〜(初演)/清水 大輔 (Eup.2 Tub.2)
  http://www.scn-net.ne.jp/~maestro/sd.html

・ルースス/戸田 顕 (Eup.2 Tub.2)
  http://homepage1.nifty.com/ATODA/


第2部
・Prelude and Fugue(初演)/神長 一康 (Eup.2 Tub.2)
  http://sky.zero.ad.jp/~zai86762/

・Cancion de Cisne -a Floresta/鈴木 英史 (Eup.2 Tub.2)

・4本のテューバのための「クルシブル」/篠原 敬介 (Eup.1 Tub.3)
  http://home.att.ne.jp/banana/shinohara/

・Trois Pieces/天野 正道 (Eup.3 Tub.3)


アンコール
・ふるさと/岡野 貞一(Arr.戸田 顕)
・国際線/鬼頭 哲




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