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シエナ・ウインド・オーケストラ
第19回定期演奏会

日時:2005年6月14日(火)19:00〜
会場:横浜みなとみらいホール
レポート:下田 健太郎(ユーフォニアム&トロンボーン奏者)
http://www.shimoken.net/
シエナが純粋に音楽で勝負しようという姿勢を
強く感じずにはいられない演奏会であった
  去る6月14日(火)、シエナ・ウィンド・オーケストラの第19回定期演奏会が開催された。前回(2004年12月、第18回定期演奏会)は前売り券を手にできず、僅かな当日券を求めて並んだが、今回はしっかりと手配したためゆっくりと会場に向かうことができた。
 今回も会場周辺から部活帰りの中高生集団が軽食をほおばる姿があり、またたくさんの楽器たちが集まっていた。

 しばらくして席につくと、いよいよ開演。

 演奏会の幕開けはレナード・バーンスタインの《スラヴァ!》(クレア・グランドマン編曲)、以前もシエナは《ウエスト・サイド・ストーリー》を取り上げたが、やはりバーンスタインの作品を取り上げる時の気合はすごいものである。決して殺気立っているわけではなく、とにかく楽しそうなのである。
 指揮台から事実浮き上がるかのように飛び跳ねるマエストロ・佐渡裕。そしてそれに応えるシエナ。今年も開場は一気にヒートアップとなった。

 続いては去年から再び取り上げられるようになった「今年の」課題曲。今回はI《パクス・ロマーナ》(松尾善雄)とII《春風》(南俊明)の2曲で、編成は楽譜枚数とほぼ同じ37名(Trpを各1本の3名で、B♭Clを各3本の9名、Bsnを2本に。)
《パクス・ロマーナ》では奏者個々が楽器を存分に響かせ、また《春風》は大変に快速な演奏であった。

 以上2曲の演奏が終わったところでマイクを握るマエストロ。今回の演奏会に「自費で」駆けつけた2曲の作曲者がステージに迎えられたのである。

 まずは松尾善雄氏が紹介され、作品について「ローマの大軍団がロンドンの街を行進する様を描いた」曲であるとコメントし、演奏については「tempoが重要」であることを強調された。氏は「シエナの堂々とした響き」に満足されたということであった。
 そして南俊明氏、なんと北海道からはるばるいらしたのである。この曲《春風》はマエストロも気に入ったようで、「思わず歌詞をつけたくなるメロディー」の「非常にわかりやすいマーチ」を楽しみ、そして楽員には「付点があったら誇りに思え」というメッセージを与えて演奏に臨んだとのことだ。

 さすがに吹奏楽コンクール本番にこのテンポで音楽にできる団体はそう多くないことだろうが、筆者はこの演奏にひとつ思い浮かべたことがある。

 上岡洋一の行進曲《秋空に》であるが、この曲もイーストマンWEの公演でD.ハンスバーガーによって快速に演奏され有名になった曲であり、「秋」と「春」のこの2曲が筆者の頭の中で対になり、一人楽しくなってしまった。
《春風》に取り組まれたみなさんは、ぜひ《秋空に》にも取り組んで欲しいと思う。

 閑話休題、気を取り直して第1部ラストの曲を。

 グスターヴ・ホルスト作曲の《吹奏楽のための第1組曲》変ホ長調作品28-1である。
 ここ最近再注目されるようになった曲であるが、それは昨今の《ジュピター》ブームなどではなく、この曲が近現代の吹奏楽の原点というべき作品であり、にもかかわらず世の中のアレンジ作品ブームによってしばらく取り上げられなかったものである。

 作品の解説はもちろんプログラムノートの通りだが、そして演奏は期待通りの好演であった。昨年の録音がつい先日発売されたばかりということもあって細部までていねいな仕上がりを見せていた。その中で筆者が注目したのは第3楽章《行進曲》であり、すなわち先の2曲の課題曲とは全く異なる作品であり、この演奏会のプログラムにあって(第1部のメイン曲ということ以上に)大変に重要な役割を果たしたといえる。

 わかりやすいところでは《春風》では元気よくタクトを振っていたマエストロもこの曲ではその振り幅をごくわずかにし、おそらくは表情でのメンバーとのやりとりを多くしていたことであろう。これはもちろん《パクス・ロマーナ》とも違う。


 先ごろ急逝された鈴木竹男氏は「最近はマーチの上手な団体が少ない」とよく誌面に書かれており、またプログラムノートはじめ、あちこちに引用されているようにフレデリック・フェネル氏は「この曲のスコアと生活しなさい」とまで言っておられた。
 今回いわゆる「マーチの年」に、そしてこのタイミングで定期演奏会にこの曲を取り上げた意味を、聴衆に深く感じてほしいと考えるが、いかがであっただろうか。

 休憩の間ずっとそんなことを考えていたため随分と文章量が増えたが、気を取り直して第2部へ。

 第2部はおなじみ「音楽のおもちゃ箱」。前回は石川直氏の超絶ドラムソロであったが、今回は何が・・・と思いきや、なんとセーラー服。後ろの面々はセーラーの襟だけ(紙製?)であったが、前列の一部は本当にセーラー服。しかも・・・ルーズソックスまで。
 何をいったい・・・と思っていたところでマイクを持つマエストロ。

 昨年の映画「スウィング・ガールズ」にちなんで、ということでジャズ・ナンバーを3曲。《In the Mood/Joe Garland》《Moonlight Serenade/Glenn Miller》《Sing Sing Sing/Louis Prima》。

 若いメンバーが多いシエナにあって、こういったナンバーを演らせると、その上手いことったら。発音など(だけじゃないけど)決して同じ吹き方でいわゆるジャズとクラシックの音色は吹き分けられないのだが、こういう時は妥協なくJazzの奏法を追求する、このあたりの柔軟さが自分がシエナに惹かれる所以である。

 ポップスもクラシックも中途半端に演奏してしまうのが「スイソウガクって・・・」というところだが、ぜひ中高生のみんなも、いろんな音楽をそれぞれのスタイルで追求してくださいな、といったところである(クラシックだって、例えばロシア音楽とフランス音楽なら随分と違うのだから)。

 続いてマエストロ、「夏の定期は久しぶり」ということで、酒井格作曲の《たなばた》(原題:The Seventh Night of July)。この曲は作曲者が高校生時代に、メンバーのことを思い浮かべながら書いた作品であるということは有名であるが、それゆえセーラー服での演奏はとても印象的であり、そして、もちろんそれにはプロのワザによる裏づけがあって。(詳しいエピソードはBP「作曲家の大部屋」から酒井格氏のサイトへ)。

 ちなみに、あまり関係ないが、最近某サイトで「ユーフォニアムのミュート(131小節目)をどうするか?」といったことが話題になっていたが、この日は2名ともデニス・ウィックと思しきミュートを着けており、これも納得していただいたのではないだろうか。

 そして、この曲が終わるとメンバーの郡氏、大津氏などが舞台から外へ。降り番なんてことではなく、いわゆる「演出の予感」。
 始まった音楽は大ブレイクした《マツケンサンバII》(宮川彬良)、マエストロ佐渡はマツケン顔負けのゴージャスな着物、そして先のメンバーも「腰元ダンサー」へ(今回の衣装は全てド○キ(わかんないヤツは親父だぜい!・・・編集部注)でそろえたとのこと)

 言ってしまえば「大人のワルノリ」だが、ノリノリのステージ。
 しかしマエストロ、曲が終わったところでなんと不満を。「帯が解けちゃったから、もう1回!」・・・フルコーラス終わったあとで言うのはどうかと。(笑)

 なので理由付けに(?)「会場のみなさんも一緒に振り付けを!」ということで、“SPANISH!”と“OLE!”の2つ(わかる人にはわかるはず)を要求。んでもって、本当に2回目。もちろんフルコーラス。

 ハイテンションで押し切った第2部、高校生以上にハシャいでいたのではないだろうか。でも、楽しさが音楽の原点であることだけは間違いない。

 第3部、今回はドビュッシーとラヴェル。
 富樫鉄火氏はシエナのメール・マガジンの中で「同列に論じることは無茶な話」としているが、しかし続けて「印象派のほぼ同時代に、フランスで活躍したという点では、見事に共通している」と書いている。
 そう、フランスの音楽なのである。既に交響詩《海》や《ダフニスとクロエ》など、これら作曲家の作品は吹奏楽(コンクール)でも良く取り上げられるが、果たして取り組んできた方々はどんな印象を持っているだろうか。

 筆者の感じることはまず「繊細」であり、そして色でいうならば例えば同じ「赤」でも何種類もの微妙な赤を使い分け、そしてそれが単色の水墨画ではなく、「中間色の豊かな」フルカラーを使いこなす音楽だということである。
 昨夏もシエナは《ダフニスとクロエ》の名演奏を聴かせてくれたが、果たして今回はどうか、というところでいよいよ演奏。

 まず《喜びの島》、真島俊夫氏によるアレンジである。筆者はこのピアノ原曲そして管弦楽版ともに恥ずかしながら聴いたことがないのだが、(北條美香代編曲のSax4版だけはCDを持っているのだが)だがしかし、例えば《展覧会の絵》がそうであるように、ピアノという1つの楽器による曲をアンサンブルにすることは、実に多くの喜びを伴うことであり、いうなれば真島氏がピアノ・スコアという大地を入念に分析して、そこに設計図を書き、それをマエストロの下、シエナという新しい建物を作る作業ではないだろうか。

 そして《ラ・ヴァルス》、こちらは天野正道氏によるアレンジ。楽器の組み合わせや使用法など非常に凝ったアレンジで、大変そうに見えるパートから、しかしその楽器の音がしないのである。誤解のある表現だが、だがしかし先に述べた「中間色」を、果敢に求めたアレンジだと感じた。

 ・・・この2曲についてあまり感想らしい感想は書けないのだが、すなわち「上手い・上手くない」で片付けられないものであると感じたのである。
 新しいレパートリーの発掘に努力するのはプロとしての義務であり、もちろん今回新しいスコアの演奏はとてもよくまとめられていたと感じる。
 筆者としてはこれらの作品は繰り返し取り上げてもらい、ぜひ聴く側が咀嚼できるようにしてもらえればと感じた。

 アンコール1曲目は、やはりフランスの作品。ガブリエル・フォーレの《ラシーヌ讃歌》。しっとりと聴かせる曲に、自分の後ろにいた中学生は「さみしい曲だね」と友達にもらしたが、ホール全体によく響き渡る音楽は聴衆の心にしっかりと響いたことであろう。

 ・・・ちょっとしんみりしたが、まわりはバタバタ。
 やってきました、《星条旗よ永遠なれ》。前々から誘われていたこともあり、今回は自分もEuphで参加。

 今まで見下ろしていた舞台に乗ってみると、その密集度の凄いことったらもう。なんとかEuphのあたりにたどりつき、中村睦郎氏から楽譜の約束事をもらい、準備が整ったところでいよいよ開始。マエストロは「自分の座席ででもOK」とアナウンスするのだが、今回はP席(オルガン前)最前列にフルートの男の子がおり、舞台上よりかえって目立っていたり。また指揮者もたくさん出るのだが、男子高校生と思しき少年がとてもよい表情で伸びやかな、大変音楽的な指揮を披露してくれた。彼の将来が楽しみである。

 そして、ピッコロ・ソロであるが、なんと今年はテューバもソロに乱入。佐渡氏もビックリ。そんな《星条旗》が終わってカーテンコール、そして終演となった。

 筆者も睦郎氏に握手してもらい、舞台を後にしたがまわりは笑顔一色、大変
によい気分になってしまったので思わず帰りに一杯飲みに行ってしまった。


 以上、全体を振り返ると、前回第18回ほどの豪華さ(コッテリ感)はないものの、しかし安定した人気を得るようになったシエナが純粋に音楽で勝負しようという姿勢を強く感じずにはいられない演奏会であった。

 次回横浜は特別演奏会だが、その次には記念すべき第20回定期演奏会。これからもシエナが見逃せない存在であることは確かだ。



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