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21世紀の吹奏楽 第8回“響宴”

日時:2005年3月20日(日)14:00〜
場所:東京芸術劇場 大ホール
レポート:織茂 学(ピアニスト) 
http://www.k3.dion.ne.jp/~m-orimo/
音楽を楽しむという点で、作品のあり方を原点から
改めて見つめなおすきっかけとなる演奏会だった
 春。 3月。一般的には卒業シーズンですが、音楽界・吹奏楽界にとっては演奏会シーズンでもあります。「温故知新」の「知新」の部分を大きくつかさどり、常に吹奏楽界に一石を投じ、変化と発展を支え、演奏会のプログラミングだけでなく、吹奏楽のありかたについても多大なる影響をもたらしている重要な催し物の1つ「響宴」。全国より吹奏楽関係者「作曲家・指揮者・演奏家・演奏団体・出版社・メディア」が一堂に会するため、交流や情報交換が積極的に行われており、色々な方々に気軽に声をかけることができるのも特徴の一つですね。

 今年も「21世紀の吹奏楽“響宴”」が3月20日東京芸術劇場にて開催されました。
今回は、新しく応募のあった73作品に、昨年までの繰越作品10作品を加えた計83作品中から、より良作の18作品が、全5団体による素晴らしい演奏によって披露されました。今年は新しい試みとして協奏曲形式の作品1作品に加え、マーチ作品が6作品、演奏団体では、第5回出演の陸上自衛隊中央音楽隊に続いて、自衛隊より航空自衛隊航空中央音楽隊+同隊員でユーフォニアム奏者の外囿祥一郎氏を迎え、今年も変化の
ある「第8回響宴」が開催されました。

では早速、その演奏会を覗いて見ましょう。

 今回のレポートも昨年のレポートと同様に、プログラム順に書かせていただくのではなく、当日のプログラムノート等を参考に、私が考えた大まかな区分(3区分)を元に話を進めさせていただこうと思います。少しでも選曲の参考になってくだされば幸いです(各項目の曲順は演奏順です)

◆マーチ作品

まず初めに、今回作品数が多かった「マーチ作品」を取り上げてみたいと思います。

 1 曲目は《行進曲「風の音に乗って」/渡部哲哉》です。
 さわやかなサウンドとハーモニーがとても親しみやすい作品に感じました。“音楽は吹いていても聴いていても楽しい”という感じがする作品だと思います。演奏会の1曲目でもアンコールでも良い一般的なスタイルの作品だと思います。

 2曲目は《さくらマーチ/杉本幸一》です。
 前奏に有名な《さくらさくら》の冒頭メロディーを用い、“和”と“洋”の雰囲気を上手くブレンドしていると思います。もう少し主要部に入っても“和”のテイストがあるとさらに良いかもしれません。


 3曲目は《その胸に抱け青雲の志/内藤淳一》です。
 作曲者のご子息のために書かれた作品だけに、内藤作品らしいやわらかい、そして暖かいメロディーと対旋律が“家族愛”を感じさせてくれるのではないで しょうか。

 4曲目は《MARCHE CAPRICE/阿部勇一》です。
 今年もとてもカッコ良い作品です。マーチ・4分の作品ではありますが、演奏会のプログラミングの際は、どこの位置に配置しても、その場所を十分務められる作品だと思います。「CAPRICE」とは「きまぐれ」という意味の様ですが、あくまでも作風についてですので、演奏するにはしっかりとした技術が個々の楽器に求められていると思います。

 5曲目は《行進曲「風のハーモニー」/松尾善雄》です。
 松尾氏といえばマーチ、マーチといえば松尾氏ですね。この作品も松尾氏らしい、安定感のある作品になっております。美しいメロディーと対旋律はとても親しみやすく、思わず口ずさんでしまう 爽やかな作品です。

 6曲目は《Naval Bleu/真島俊夫》です。
 真島氏独特のオシャレな和音と安定したオーケストレーションが演奏者と聴き手を魅了します。水面のキラキラした様子が、明るい未来をイメージして描かれているようで、「さぁ、これから始まります!」という呼びかける雰囲気を持った作品です。演奏会幕開けを華やかに飾ってくれると思います。


◆演奏会や催し物際の選曲として効果的な曲


続いては、演奏会や催し物際の選曲として効果的な曲を挙げてみたいと思います。

 1曲目は《Thread for wind orchestra/寺井尚行》です。
 Thread(=プログラムの処理の事)というコンピュータ用語をタイトルに用いた作品です。2進法(0か1)での世界観を表しているような感じがします。それらの小さな集合体、つまり、細かいパッセージが徐々に小さな集まりを作りやがて一本の線になり終わりへと向かっていきます。自然界で言えば、川の源流(=小さな湧き水)が支流などを加え下流に向かうにつれて大きな一本の川になる、という感じだと思います。技術的に難しいかもしれませんが、音楽の作り方を勉強するには適している作品だと思います。

 2曲目は《SALTY MUSIC/三浦秀秋》です。
 A(ラ)の音の伸ばしより始まるため一瞬、チューニングかと驚きました。作曲者も述べているように実験的に書かれたようです。“吹奏楽のための”というよりは“バンドのための”ジャズ的な要素が強い作品だと思いました。テンポ良くノリの良い作品ですが、打楽器の技術や、休符のとり方や感じ方がやや難しいかもしれません。

 3曲目は《未来への飛行/本澤なおゆき》です。
 作曲者の兄に捧げられた作品です。雲ひとつない快晴の空に飛んでいく飛行機の姿と、希望に満ちた自分自身の未来の行く末を重ね合わせて表現されているようです。
ノリの良い作品で、ドラムスがテンポを支配し、しかもそのテンポが速いため細かいパッセージが難しそうに感じると思いましたが、テンポにのることができれば楽しく演奏できると思います。

 4曲目は《花の歌/福島弘和》です。
 とても厳かな雰囲気を持ちながら始まるこの作品は、作曲者と親しくされていた恩師が亡くなった際に書かれ、その師に捧げられております。なお、この作品は作曲者の思いが詰まっており特別な作品だと思いますので、作品の云々は私が評することはあえて差し控えたいと思います。

 5曲目は《アプローズ!/坂井貴祐》です。
3分未満の短い作品ですが、とてもパワフルで勢いのある楽しい作品です。最初から最後まで走りきるという作品のため、作曲者も述べておりますが、アンコールに最適な作品だと思います。ただ、演奏会の勢い余って、あまりにも速いテンポで演奏すると難しいかもしれません。ほどほどなテンポでどうぞ。

 6曲目は《ペル・ソナーレ/八木澤教司》です。
 昨年までの氏の響宴出品作品とは作風が少々違い、自然描写的ではなく響きとリズムが音楽を作り上げていました。しかしながらやはり八木澤作品であることは間違いないです。メインはリズミカルな拍子が続きますが、後半、その中からあのコラールが出てくるのはとても秀逸です。演奏会の1曲目、あるいはクラシカルステージの最後に相応しい作品だと思います。


◆演奏会でメインになりそうな曲


続いて、演奏会でメインになりそうな曲として次の曲を挙げてみたいと思います。

 1曲目は《ウィンド・アンサンブルのための五章「ケンタウル祭の夜に…」〜宮澤
賢治「銀河鉄道の夜」によせて/建部知弘》
です。
 原曲は同名のトロンボーンカルテットのための作品です。約13分、5つの楽章よりできており、各楽章とも副題の通り色々な場面が描かれております。個々の楽器の技術はもとより、全体のサウンド感をそれぞれの色を上手く再現しつつ、全体の統一感を持たせることが大切かと思います。作曲者の宮澤賢治対する思い入れの深さを感じる作品で、同作家が好きな方には、随所随所で「にやり」とするところがあるのではないでしょうか。

 2曲目は《音楽祭間奏曲/小長谷宗一》です。
 とても厳かで重厚な響きと雰囲気を持つ作品です。全体的に遅めのテンポで統一されているため、最初から最後までどっしりとしたテンポ感を持続させる事がもっとも重要な事だと思います。この作品は《音楽祭前奏曲》(九州市民バンドフェスティバル委嘱)と対になる作品だそうです。

 3曲目は《枯木のある風景/飯島俊成》です。
 川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団の委嘱作品(1997)ですが、その初演以降演奏されずに今回の響宴作品として再演されました。その理由は作品を聴いたらすぐに納得できました。とにかく難しい作品です。個々の楽器に求められている技術の高さはもとより、感性・タイミング・創造力がとても必要な作品だと思います。枯木を中心に背景(風景)のみが変化をしていく。しかし、実は枯木自身も変化し、輪廻転生する。一見、矛盾する内容の様に感じますが、それぞれが持っているの時間の経ち方・過ぎ方・感じ方の違いにより生じる、ある種、究極の情景描写ではないでしょうか。

 4曲目は《残酷メアリー/田村文生》です。
 吹奏楽に対する独特の視点からアプローチをかけ描いているように感じます。ですがサウンドやメロディー等も大切にされています。それに加え、「日本文化では“和”を大切にしますが、フランス文化特有の“個” を大切にする」、つまり、音一つひとつをさらに掘り下げて究極を求めている様に感じました。演奏効果は素晴らしくカッコ良いですが、難曲には違いありません。技術を兼ね備えたバンドならばコンクール等でもとても演奏効果が高い作品だと思います。

 5曲目は《Secret Song/北爪道夫》です。
 当日のプログラムノートに「個々の奏者において、全ての意味での表現力の振幅と密度が決め手となる、美しくも難曲である」と書かれているように、繊細に奏するための集中力・持続力を高い位置で求めているように思います。一人ひとりが責任をもって演奏することにより、妥協のない、より高度なアンサンブルが求められている作品です。

 6曲目は《LEGEND Euphonium and Wind Ensemble/津堅直弘》です。
 外囿氏のために書かれた作品です。沖縄風のメロディーを用いて沖縄の文化や歴史を表現している作品です。場面を前半と後半の2つに分け、前半は変奏曲、後半は戦争の悲惨さを表現した後に再び前半のメロディーが出てきます。メロディーは沖縄らしいしっとりと歌い上げる感じです。外囿氏の音楽性や技術を思う存分発揮させるには、少々物足らない感があったのは私だけではないはずです。もう少しユーフォニアムが目立つ技巧的なソロ・パートを期待していただけに、そこのところが残念なところでもあります。

 今回は演奏会レパートリーとしての作品が多かったように思います。近年コンクール等のために書かれた作品が多く見受けられます。もちろんそれらの作品も素晴らしいものがあると思います。コンクールで演奏する作品には向き不向きがありますが、音楽を楽しむという点から考えてみると、作品のあり方について原点から改めて見つめなおすきっかけになったのではないでしょうか。
 
 以上、今回も私の主観で上記のように書かせていただきました。今回の演奏会の模様もライブCDとして発売されています。会場で聴くのとCDで聴くのとでは若干の違いがあるかと思われますが、当日感じた素直な感想を書かせていただきました。

響宴HP http://www.ne.jp/asahi/21c/wind-1/


■プログラム

中央大学学友会文化連盟音楽研究会吹奏楽部 指揮:小塚 類
   http://www.fsinet.or.jp/~brass/

・行進曲「風の音に乗って」/渡部 哲哉(約3分・28人)
   http://homepage.mac.com/tetsuyanmusic.net/

・Thread for wind orchestra/寺井 尚行(約5分・27人)
 〜小編成・ウィンド・オーケストラ・プロジェクトII〜

・ウィンド・アンサンブルのための五章「ケンタウル祭の夜に…」〜宮澤賢治「銀河
鉄道の夜」によせて/建部 知弘(約13分・39人)
 〜秋田吹奏楽団委嘱〜


川越奏和奏友会吹奏楽団 指揮:佐藤 正人
   http://sound.jp/kswe/

・SALTY MUSIC/三浦 秀秋(約6分・40人)
   http://www.sound.jp/orchestra/

・音楽祭間奏曲/小長谷 宗一(約8分・45人)
 〜神奈川職場一般吹奏楽連盟委嘱〜
   http://www.band-p.co.jp/konagaya/

・枯木のある風景/飯島 俊成(約9分・50人)
 〜川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団委嘱〜
   http://www.ne.jp/asahi/toshinari/home-1/


埼玉栄高等学校吹奏楽部 指揮:大滝 実

・さくらマーチ/杉本 幸一(約3分・40人)
 〜さくら銀行(現・三井住友銀行)吹奏楽団委嘱〜

・その胸に抱け青雲の志/内藤 淳一(約4分・36人)

・未来への飛行/本澤 なおゆき(約7分・31人)
   http://www.linkclub.or.jp/~honzawa/

・花の歌/福島 弘和(約8分・35人)
   http://www1.odn.ne.jp/maurice-ravel/fh-profile.html

・アプローズ!/坂井 貴祐(約3分・35人)
 〜航空自衛隊中部方面音楽隊委嘱〜
   http://www.sakai-takamasa.net/


神奈川大学吹奏楽部 指揮:小澤 俊朗
   http://www.ctktv.ne.jp/~trombone/

・MARCHE CAPRICE/阿部 勇一(約4分・42人)
 〜大津シンフォニックバンド委嘱〜
   http://www.cna.ne.jp/~a-byuu/

・Secret Song/北爪 道夫(約6分・30人)
 〜小編成・ウィンド・オーケストラ・プロジェクトII〜
   http://homepage3.nifty.com/enterprise/kitazume-michio/

・残酷メアリー/田村 文生(約8分・40人)
 〜武蔵越生高等学校吹奏楽部委嘱〜
   http://www.kobe-u.ac.jp/bunsay/


航空自衛隊航空中央音楽隊 指揮:松井 徹生
   http://www.jda.go.jp/jasdf/ongakutai/

・行進曲「風のハーモニー」/松尾 善雄(約4分・39人)
 〜箕面市青少年吹奏楽団委嘱〜

・LEGEND Euphonium and Wind Ensemble
  /津堅 直弘(約11分・ソロ+35人)
   Euphonium:外囿祥一郎 http://homepage1.nifty.com/hokazon/

・ペル・ソナーレ/八木澤 教司(約6分・35人)
 〜富山ミナミ吹奏楽団委嘱〜
   http://www.horae.dti.ne.jp/~yagisawa/home/

・Naval Bleu/真島 俊夫(約4分・29人)
 〜陸上自衛隊東部方面音楽隊委嘱〜
   http://www.atelierm.net/

 

 

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