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東京佼成ウインドオーケストラ
第85回定期演奏会

◎大興奮の東京佼成WO!
下野竜也が切り開いた新しい歴史


 東京佼成ウインドオーケストラ(以下、TOKWO)の演奏は、フェネルさんが指揮をした地方公演を含めれば、もう10回くらいは聴いている。その度ごとに新しい感動を与えてくれた。でも、今回は初めて「ブラボー!!」と叫んでしまった。よりにもよって、前から4列目、さぞ、壇上の皆様も驚かれた事だろうと、後から考えると、少し恥ずかしい。

 TOKWOの第85回定期演奏会では、いまやクラシック界では知らぬ者のない気鋭の指揮者、「下野竜也」氏を客演に迎え、「Old & New」をテーマに、古今東西の名曲が数多く演奏されました。下野氏は、デビューCD「大栗裕管弦楽作品集」(NAXOS)が大ヒットし、一躍時の人となりました。このCDが出た時、「えっ、大栗先生のオケ曲をCDにする人がいるの!?」と正直驚き、またその確かなセンスに舌を巻きました。その下野氏がTOKWOを指揮する・・・! もう、何ヶ月も前から、この日が来るのが待ち遠しかったのです。

 冒頭の「ファンファーレ〜」から、明るくてきらびやかなブラスのサウンドがはじけ飛びます。ああ、この人は吹奏楽を知っている人だ、という事が、この「音」で分かりました(アンコールの時、「昔、吹奏楽部でトランペットを吹いていた」と語ってました。なるほど納得)。これで、今日の演奏会は成功と決まったようなものです。

 2曲目の「セント・アンソニー・ヴァリエーション」は、日本では滅多に演奏されない「原典版」です。ご存じの通り、日本で一般に流通している楽譜は、かつて天理高校がカット&編曲したヴァージョン(俗に言う「天理版」)です。この編曲がおかしい、という事はないですが、ここまで原典版が演奏されないのは何故だろう・・・、という疑問をずっと抱いていました。

 なるほど、確かに「難しい」曲です。、難しい、というのは、技術的な事じゃなくて(いや、それも難しいでしょうが)、とても深い、そして神秘的な曲だ、という事がよく分かりました。二流のバンドが演奏すると、退屈で眠くなりそうで、ちょっと危険・・・、でも、TOKWOの演奏は緊張感があり、そのまま吸い込まれいくような美しさでした。ラストに「聖アンソニー」のコラールはありませんが、確かな説得力をもったその響きに胸を打たれました。

 3曲目、グランサムの新曲「舞楽」は今回が世界初演。「雅楽」の響きと、日本古謡「さくらさくら」のテーマをモチーフとしながら、吹奏楽ならではのエネルギッシュなサウンドにあふれた超名曲!中間部の、ファゴット・ソロによる「さくらさくら」の美しさは筆舌に尽くしがたいものがありました。演奏が終わった後、スコアを高々と掲げて客席の方を向き、満面の笑みを浮かべる下野氏がとても印象的でした。

 前半最後は、あの「華麗なる舞曲(ダンス・フォラトゥラ)」です! TOKWOのCDでは、少し遅めのテンポで、若干の不完全燃焼感を覚えましたが、今回の演奏は・・・、ブラボー!ブラボー! 正直、所々ずれていたように思いますが(汗)、この曲はやはり、燃えて燃えて、興奮で訳が分からなくなるくらいが丁度いいように思います。冒頭から快速なテンポで突き進み、中間部では一点、ジワーッと遅めのテンポで各楽器のソロを聴かせつつ、ピッコロ・トランペットのソロあたりから(これがまた素晴らしい!)徐々に制動が利かなくなり、冒頭のファンファーレが回帰する頃には、もう完全なお祭り状態、という感じ。もう、今日のプログラムこれにて終了!、でも充分満足、というくらいでした。これぞTOKWOの実力! まいりました。

 さて、後半はみなさまお馴染み「パクス・ロマーナ」ですが・・・、あれ、配置がまるっきり違ってる??そう、ほとんどのイスと譜面代は片づけられ、雛壇のあたりにだけ、約30脚が並んでいるのみ・・・、はて?、と思いましたが、団員が出てきて並んだところでなるほど納得、楽譜上に書かれた最小の編成で演奏したわけですね(多分、ですが・・・)。各楽器1本なので、B♭クラは各1本ずつなど、日頃見慣れたTOKWOとは全く違う配置、そしてサウンド。ちなみに、演奏解釈も独特で、特にファンファーレの「遅さ」には、会場中の人が驚いた事でしょう(僕もそうだった)。しかし、こういう全く独特の演奏によって、新しい「パクス・ロマーナ」の魅力を見つけられたのでは?、と思います。

 後半2曲目では、外囿祥一郎氏を招いての「ユーフォニアム協奏曲」。すでに、昨年末に発売されたCD「フェスタ」によって、その驚愕のテクニックと音楽性は知られていましたが、実際に生の音を体感してみると、この曲が持つ計り知れないエネルギーには、ただただ圧倒されました。もちろん、天野先生の吹奏楽作品といえば、サックス・パートの独特さに特徴がありますが、この曲でも、須川さんを筆頭とした「恐らく、世界最強のサックス・パート」が奏でる音色の素晴らしかった事!

 プログラムの最後には、下野氏が特に大切にされているであろう、大栗裕先生の代表作「大阪俗謡による幻想曲」が演奏されました。前述のCDでは、原典版である「管弦楽版」が収録され、かつて朝比奈隆先生が大切にされたこの名曲の模範的演奏を示しておりましたが、さすがライヴです、遅いテンポではグーッと緊張感を保ちつつ、解放されてフォルテになると、またも崩壊寸前の高速でドライブ!「華麗なる舞曲」も顔負けのスリリングな演奏となり、こちらも万雷の拍手が贈られました!

 終演後のアンコールでは、課題曲が2曲演奏されました(プレトークで須川さんが先に予告しちゃった! アンコールが楽しみで仕方ありませんでした)。まずは、今年の課題曲、マーチ「春風」。トリオのピッコロ・ソロがとても愛らしかったです。

 そして、2曲目。今回のテーマは「Old & New」です。アンコールでも、「New」な課題曲に続いて、「Old」な課題曲が演奏されました。それは・・・、1979年の課題曲A、青木進「フェリスタス」です!この曲、「過去の課題曲で最も素晴らしい」という評価をしている方を何人か知っていますが(指揮の下野氏も、そう仰ってました!)、実際、生で聴いてみると・・・、背筋にゾクゾクッ!、と電気が走りました。特に、冒頭の須川さんのソロの美しかった事ときたら・・・!須川さんは、高校3年生の時、課題曲でこの曲を演奏できなかったのが、今の今まで心残りだったそうです。エンディングのクライマックスも、TOKWO全体が全霊で盛り上がっていく、その感動!こんな曲が課題曲だったなんて、当時中高生だった人は幸せだなぁ!と、うらやましく思いました。

 下野氏とTOKWOのコラボレーションは、当初の予想を超える大成功だったと思います。今回、特に「華麗なる舞曲」を聴いた時、思い出したのは、あのフレデリック・フェネルさんがTOKWOを指揮した「フェスティヴァル・ヴァリエーションズ」です。かつて、限定盤としてCD化された事のあるこの演奏、ちょっとずれてたり、音はずしてたりするんですね。でも、フェネルさんは何の遠慮もなく、グイグイとTOKWOをドライブし、会場を興奮の坩堝と化してしまうのです。ここに、吹奏楽ならではの魅力があると思います。そして今、下野氏が、再びその興奮を芸劇にもたらしたのです・・・!

 下野氏は、吹奏楽の響きをよく知ってらっしゃいますし、また、数多くの内外オケとの共演を経験し、その音楽性の高さは日々いや増しています。今後、この組み合わせを、演奏会やCDで聴けたら・・・!、という新しい期待に心を躍らせています。例えば、大栗裕先生の幻の名作、「ピカタカムイとオキクルミ」を生で聴けたらなぁ!、と思ってみたり。あっ、「フェス・ヴァリ」も聴きたいな!「ファンファーレとアレグロ」も良いな。(わがままが過ぎました)


■プログラム

第1部
・ファンファーレ・フォー・ア・ゴールデン・スカイ:スコット・ボーム
・セント・アンソニー・ヴァリエーション(原典版):ウィリアム・ヒル
・舞楽(TOKWO委嘱作品・世界初演):ドナルド・グランサム
・華麗なる舞曲:クロード・T・スミス

第2部
・パクス・ロマーナ(第15回朝日賞受賞作品):松尾善雄
・ユーフォニアム協奏曲:天野正道[ユーフォニアム:外囿祥一郎]
・大阪俗謡による幻想曲:大栗裕

アンコール
・マーチ「春風」:南俊明
・フェリスタス:青木進[1979年課題曲A]


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