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北海道教育大学函館校吹奏楽団
Winter Concert 2005
「吹奏楽的温故知新〜マーチから現代音楽まで〜
◎この素晴らしい体験を
これからの未来を担う青少年に味わわせてもらいたい

  富山空港から羽田経由で函館空港に立つ。
 見える景色は、雪の山、山、山・・・・。富山も雪国のため、雪を見るのは慣れているが、3月のこの時期にもかかわらず、この雪の量。しかも夜になると、そこらかしこでスケートリンク状態。

「蝦夷地をナメたらアカンぜよ!!」

 富山からなぜ函館に? 北海道教育大学函館校のwinter concert 2005を聴くためだけに行ったのでした。3月なのにwinter concert? 富山ですら3月の演奏会はspring concertだゾ!と思いながら、自然の素晴らしさを満喫しながら函館市芸術ホールへ向かう。

 今回演奏される「海の微風 春の再来」は、私が勤務する中学校が2000年に田村文生氏に委嘱した曲です。原曲は、ドビュッシーの弦楽4重奏曲第4楽章。この名アレンジが世に出で、早くも5年もたってしまいました。
 今回、函館校で再演されると聞き、矢も楯もたまらず馳せ参じました。加えて、演奏会のゲストには伊左治 直氏も招聘されているとのこと。氏には、2003年に作曲を委嘱し、「活劇サイレント」という素晴らしい曲を作っていただきました。伊左治氏に久しぶりに会えるし、ご一緒に函館の美味に舌鼓でもと思ったわけでした。

 前置きが長くなりましたが、今回の演奏会のテーマは「吹奏楽的温故知新〜マーチから現代音楽まで〜」。現代音楽と聞いて難しそうな感じがして、勘弁してほしいと思う人もいるかもしれないけれど、大学生ならではのトコトン突き詰めようとする姿勢に拍手喝采。若いんだから聴き手に媚びる必要はないよ。
 でも、曲が現代音楽のために、アナウンサーから影マイクで曲目だけ紹介されても意味不明。今回の演奏会の成功は進行役にかかっている。その大役を東京オペラシティプロデューサーの国塩哲紀氏が務める。彼の博識に感心しきり。今回の曲の構成から背景まで綿密に調べている。
 演奏会場は、マニアックなコンサートの割には結構な入り。団員の親族が多い中にも、指揮者の渡部氏への応援団もかなり来ている。

 函館校のオープニングは、インパクトがある。昨年のwinter concertは「オックスフォード伯爵の行進曲」に合わせてパート毎に登場するパフォーマンスだったと思うのですが、今年は女声合唱の名曲「12のコルシカ島の歌」より「波間の漁夫」の合唱がオープニング。この曲は合唱コンクールの定番です。女声合唱のため、男性諸君はfalsetto。トーンも合ってて美しい響き。合唱から始まる演奏会も良いですね。

 2曲目は浦田健次郎作曲の「プレリュード」。1979年度のコンクール課題曲です。ここからは進行役の国塩氏の本領発揮。演奏データから曲の分析解説まで、わかりやすく説明される。曲自体は今では自然に聴こえるけど、当時は現代曲であると言われた曲。名解説にも助けられ、聴衆の反応も良い。演奏は適度な緊張感が心地よい。

 次は「夕焼けリバースJB急行」。いよいよ本日のゲスト伊左治作品の登場です。この曲は、基はブラームスの「ハイドン・バリエーション」。でも全く予備知識なくてこの曲を聴いたとき、全国中の何人が基ネタを見破ることができるだろう。
 我々の知っている旋律はカズーという楽器を打楽器パートの人が吹く数小節のみ。当初は、アレンジのつもりだったらしいが、進めるうちに完全に作曲になってしまったとのこと。函館校は、今回の演奏で吹奏楽作品での伊左治チクルスを成し遂げてしまった。1年前の「活劇サイレント」、コンクールでの「南蛮回路」、そして今回の演奏となった。そのため、自信に満ちた演奏。
 伊左治作品を初めて演奏する場合は、氏の雰囲気を掴むのに多少時間がかかる。しかし、函館校は伊左治氏の世界を咀嚼しているように感じられる。団員が楽しんで演奏している様子がよくわかる。進行役の国塩氏と作曲者の伊左治との対談もあり、曲の興味がかなり増した。

 1部の最後は「海の微風 春の再来」。これは、弦楽四重奏の純粋なアレンジ作品である。ドビュッシーの管弦楽作品のアレンジであると言っても世の人は信じてしまうような名アレンジ。ひさしぶりに聴いた。なつかしい。委嘱当時の中学3年生は今ちょうど大学1年生。蝉の鳴き声が聞こえる中、懸命に練習していた日々が思いおこされる。中学生対象のアレンジではあるが、かなりの難曲。函館校の諸君も譜読み段階では、かなり大変だったらしい。
 演奏前の国塩氏の解説も的確なもの。そして演奏は各人の良さを十分出し、丁々発止の熱演を聴かせてくれた。田村文生氏のオーケストレーションの素晴らしさとともに演奏のレベルの高さが際立ったものであった。
 昨今、日本全国で演奏される機会が徐々に増えている曲である。今後、より演奏回数が増えることを期待したい。

 1部においては、1曲も聴いた曲がないという聴衆が大半であったと思われる。しかし、曲の徳の高さが演奏会自体を緊張感のあるものにしていた。今回は、進行役の国塩氏の名解説が成功していた。また、伊左治・田村両氏の曲が続けて演奏されることも希有なことである。今日来場した方々は、ラッキーな日であった。

 2部は鼎談(ていだん)。普通concertで鼎談はあまりないのではないでしょうか。しかし、今回のようなテーマの演奏会では、この鼎談が意味深い。指揮者の渡部氏が司会をし、伊左治氏と国塩氏が、日頃の思いを話していた。長い年月残っているものは価値が高いから残るものであり、新しいものを求めることの重要性と同時に、古くから残っている価値の高いものに対しても勉強する姿勢が大切であるということを熱っぽくディスカッションしていたのが印象に残った。
 このような大学の集中講義のような企画もおもしろいものである。この企画も大学の吹奏楽団ならではできることかもしれない。観客の中には、俺にも言わせろと思っている人もいるでしょう。ぜひネットを通じて話題が盛り上がればと思う。

 3部はマーチ特集。最近、マーチだけでプログラムを構成することは少なくなった。今回はいろいろなマーチを聴くことができた。1部・2部で難しく思った人は、この3部で楽しめたと思う。演奏者も俄然余裕をもって吹いている。
 進行役の国塩氏は、ここでの解説は短めに素早く行い、流れを引き締めていた。渡部氏の指揮も、すべての曲のもつ性格を引き出している。
 6曲演奏したが、各々の曲の個性が見事に出ている。特に、タイケの「旧友」とスーザの「星条旗よ永遠なれ」を続けて演奏したときは圧巻。「星条旗」の演奏直後ブラボーまで出る始末。まだ1曲残っているよ! ラストの戴冠式行進曲「王冠」は、最後の力を振りしぼっての熱演。聴衆も充分に楽しんでいた。

 アンコールでは、ブラームスのハイドン・バリエーションのテーマ。ホッとした気持ちになる。名曲は不滅である。このような旋律を聴くと、過去の価値の高い曲があったために現在の音楽の発展があると再確認された。そして、先日惜しまれながら亡くなったマエストロ フェネルの定番のアンコール「His Honor」で演奏会を締めくくった。

 それにしても函館校の勢いは素晴らしい。国立大学のひ弱なイメージはなく、昨年の東京で行われたコンクールの全国大会の時から比べると、明らかにパワーアップしている。この数年の、徳の高い曲への挑戦が芽を結び始めている。無気力な若者が多い昨今、彼らは輝いている。上野文化会館での全国大会の熱演が彼らの自信となっていることは言うまでもない。渡部イズムが徐々に浸透するにつれ、厳しさが増してきているようである。

 最後に4年生でエキストラで出演したり、裏方でサポートしたりした学生は、今回でラストステージである。ご苦労様でした。良き思い出ができたでしょう。教育大であるため、彼らは将来教壇に立つでしょう。この素晴らしい体験を、これからの未来を担う青少年に味わわせてもらいたい。

海の微風と春の再来:C.ドビュッシー/田村文生 作曲
http://www.rakuten.co.jp/bandpower/457699/460107/

北海道教育大学函館校吹奏楽団
http://www.geocities.jp/hue_brass/pc.html

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