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シエナ・ウインド・オーケストラ 第18回定期演奏会

 かねてよりBPでも告知されていた、シエナWOの第18回定期演奏会、および、それに至るツアー(宮城・名取市、福島・原町市、新潟市、長野・松本市)が終了した。

 今回は、来年5月に発売されるCD&DVDの収録も兼ねたツアーだったようで、指揮者・佐渡裕とメンバーの入れ込みようもなかなかのものだった。

 ここでは、ツアー最終コンサートにあたる、12月20日、神奈川・横浜の「横浜みなとみらいホール」における定演の模様をお伝えしておこう。

 今回のチケットは、早々と完売が告げられていた。ネット上でも、「チケット求む」の書き込みがずいぶん見られたし、当日も、早くからキャンセル待ちと思しき行列が、入口にできていた。もちろん客席は満杯だし、恒例の「みんなで≪星条旗≫」も、ステージ上に乗り切れないほどの参加者だ(少々、危険さえ感じた)。

 この熱気では、そう遠くないうちに、公演回数を増やす必要もあるのではないか。首席指揮者・佐渡裕に海外での仕事が多く、むずかしいのなら、ゲスト指揮者を招聘する手もある。ボストン交響楽団とボストン・ポップスみたいに、ポップス専門コンサートがあっても、いいかもしれない。
 いずれにせよ、このままでは、シエナ公演は、単に「チケットのプラチナ化」だけが先行し、彼ら本来の「音楽をみんなのものに」なる目標が、どこかへ行ってしまうような気がするのだ。

 さて、それだけの熱気を聴衆が生んでいるだけに、演奏の方もすごかった。

 シエナの曲目には、最新曲の紹介・啓蒙といった要素は少ない。近年は、一種のなつメロ路線で、アンケートで人気の高かったオリジナル曲や課題曲を演奏することが多い。
 その姿勢を「後ろ向き」と評する人もいるが、しかし、ここまで徹底して、しかも最上級の、元気と若さタップリの演奏で聴かせてもらえれば、誰も否定はできないだろう。
 うまい例えではないかもしれないが、『白い巨塔』『砂の器』『黒革の手帳』といった、一昔前の小説が、新しい観点でTV化され人気となっているのと、どこか似たようなものを感じるのだ。

 曲は、≪20世紀FOXファンファーレ≫(A.ニューマン/真島俊夫編曲)で始まり、ほとんどアタッカ(切れ目ナシ)で、≪高度な技術への指標≫(河辺公一)へなだれ込む。1974年のポップス系課題曲である(佐渡裕自身が、若い頃、憧れた課題曲らしい)。超ハイスピード、目の回るような速さで演奏する。

 続いて、アンケート上位の2曲、≪シンフォニア・ノビリッシマ≫(R.ジェイガー)、≪フェスティヴァル・ヴァリエーションズ≫(C.T.スミス)がつづく。
 後者では、もちろん、ホルンの音が引っくり返ったり、木管群のブレスがうまくいかなかったり、といった事態は皆無。華々しいまでのパワーで、最後まで引っ張る。

 第2部は、毎回、肩のこらない自由なプログラムが組まれるが、今回は、まず、NHK大河ドラマ『新選組!』メインテーマ(服部隆之/山下佐和子編曲)が演奏された。ミュージックエイト社の市販楽譜である。編成をずっと小ぶりにして、Trpは3本。郡”宴会部長”ほかによる、男声コーラスが参加。

 ここで、指揮者・佐渡が、トークで昔のコンクールの話題に触れ、名門・淀川工業高校の話になると、「実は、今日、その淀高の顧問・丸谷明夫先生が、会場にお見えです」と紹介され、客席から、ご当人がステージ上へ。最近は、TVのバラエティ番組などでも紹介されているだけあって、会場は、ヤンヤの喝采である。で、丸谷先生が1曲くらい振るのかと思ったが、トークのみで終了。できれば、この時間、何か、もう1曲やっていただきたかったが・・・(それにしても、大阪の公立高校の先生が、平日の夜に横浜にいて、その前後、学校の方は大丈夫なんだろうか・・・と、余計な心配をしてしまった)。

 次に、ゲストで、「ブラスト!」ソロ・パーカッショニスト石川直の登場。最初は、シエナの打楽器奏者と一緒に、今夏の「ブラスト!」休憩時間に見せてくれたのと同じ、椅子やバケツを使ってのパフォーマンス。シエナのメンバーも、「ブラスト!」と同じことをやるのでは、なかなかシンドかったはず。ご苦労様でした! 

 続いて、石川のソロ・パフォーマンス。すでに、ステージやDVDでも披瀝してくれているワザの数々だが、改めて目の前で見せられると、迫力は何倍にも膨れ上がる。
 そして、意外と新鮮だったのが、佐渡&シエナによる≪ガイーヌ≫〜「剣の舞」「レズギンカ」に合わせて、石川が4つのドラムを叩き分ける共演。あの細かい主旋律にピッタリ寄り添うように叩くのだが、クラシックとマーチングの合体のようでもあり、これがなかなか面白かった。彼のスーパー・パフォーマンスぶりは、見ても聴いても心地よい。今度は、ぜひ、≪熊蜂の飛行≫に合わせて叩いていただきたい!(たぶん、難なくこなしちゃうだろう)

 最後、第3部は、≪アルメニアン・ダンス≫全曲(A.リード)。
 この曲は、パート1(第1楽章)、パート2(第2〜3楽章)別々に演奏されることが多いが、当初から全4楽章で構想されていた曲だったので、今回のような全曲演奏が本来の姿なのだ。特にパート1は、佐渡&シエナでレコーディングもされており、さすがにお手のもの。この曲が、タイトルどおり「舞曲(ダンス)」であることを、あらためて再認識させられた、素晴らしい演奏だった。

 アンコールは、ホルスト第1組曲の第1楽章(マーチ)と、おなじみ≪星条旗よ永遠なれ≫。ここで、やっと丸谷先生が、(佐渡や参加者と一緒に)指揮。
 ホルストは、次回新譜の収録曲でもあるようだ。

 相変わらず、シエナの音色は、明るく輝いており、パワーに溢れている。
 ずいぶん前のことになるが、佐渡やメンバーが「自分たちのやっていることは、高校吹奏楽部の定演や文化祭をプロがやったらどうなるか、それをギリギリまで突き詰めているんだ」といった主旨の発言をしていたことがあった。
 私は、それでいいと思う。
 世間のプロ・バンドが、みんな、海外の最先端楽譜をわれ先に入手し、紹介していたのでは、いささか疲れてしまうではないか。元気イッパイで、楽しくて・・・これだって吹奏楽なのだ。(敬称略)

シエナWO公式サイト http://sienawind.com/

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