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福島県原町市に、市営の青少年バンドが誕生!(前編)

 すでにニュースでもお伝えしたが、福島県原町市が、小・中・高・大学生を対象とした青少年バンド「ゆめはっとジュニア・ウインドオーケストラ」を結成し、この12月5日(日)、第1回コンサートが開催された。

 地方自治体が、青少年を対象としたアマチュア・バンドを結成し、育成する例を筆者は寡聞にして知らない。

 たいへん興味深い取り組みであり、吹奏楽界のみならず、地方発信の文化のあり方として、見過ごせない企画なので、今回と次回の2回にわたって、この新しいバンド「ゆめはっとジュニア・ウインドオーケストラ」について、レポートしてみたい。

 福島県原町市は、東京・上野から常磐線の特急で約3時間、太平洋沿いにある市だ。位置的に言うと、宮城県の仙台から電車で約1時間強、南下したところにある。

 人口約5万人弱。相馬野馬追で知られる、閑静な土地だ。

 吹奏楽ファンならば、東北が”吹奏楽王国”であり、福島からも多士済済のバンドが登場していることはご存知だろう。今年のコンクールでも、東北代表として、福島の中学・高校、各々2校ずつが全国大会に進出し、小高町立小高中学と、県立湯本高校が金賞を獲得した。特に、小高中学は、原町市の最寄駅「原ノ町」から、2駅隣りにある。名門・磐城高校のある県として記憶している方も多いことだろう。

 この福島県原町市に、本年4月、市民文化会館「ゆめはっと」がオープンした。

 座席数1000人強の大ホールを擁しており、2階客席ボックス型の、なかなか立派なコンサートホールである。中に入ると、まだ、木の香りが新鮮に漂っている。名誉館長を、北欧音楽の権威として有名なピアニスト、舘野泉氏がつとめている。

 ところで・・・。

 よく、せっかく立派なホールをつくったのに、「箱ばかり立派で中身がない」と嘲笑されているところがある。

 例えば、バブル全盛期の頃、関東近県の、ある「町」が、なかなか立派な中型コンサートホールをつくったというので、開館後、しばらくして取材に行ったことがある。パイプオルガンがあって、残響2.何秒。柿(こけら)落としは、ヨーロッパの超有名オケ選抜メンバーによる室内楽。確かに、実に素晴らしいホールだった。

 だが、事務室で、利用スケジュールを見せてもらうと、埋まっているのはひと月に4〜5日で、それも、地元の民謡大会とか、ナントカ祭とか、その手の催しばかりだった。それ以外に、ホールとしての事業も特にやっていないようだった。あのホールは、いま、どうなっているのだろうか・・・。

「ホールやオペラハウスには、レジデント(専属)オケが必要だ」とは、よく言われる。そのホールで専従的に演奏するオケがあってこそ、レベルも向上し、ホールの響きも完成する・・・のだと。

 今回、「ゆめはっと」をオープンさせた原町市も、様々なことをプランニングしたようだが、そのひとつが「市営による、ホール専属青少年バンド」だった。

 どうやら、原町市側のスタッフに、吹奏楽に詳しい人がいたせいもあったようだ。あるいは、隣県ながら、1時間ちょっとの場所に、名門一般バンド「名取交響吹奏楽団」(宮城/本年のコンクールで全国大会金賞獲得)があったり、あるいは、すぐそばに、小高中学(こちらも、本年、全国大会金賞)もあったりして、そんなことも刺激になったのかもしれない。

 とにかく、おそらく日本で初めて、「市営コンサートホールに所属する、アマチュア青少年バンド」である、「ゆめはっとジュニア・ウインドオーケストラ」(以下、YJWO)を誕生させることになったのだ。

 だが、実態は、なかなか大変だったようである。結成の決定から、告知〜募集〜第1回コンサートまで、充分な時間が取れなかったようだ。

 そもそも、ある程度のバンドに所属していれば、夏はコンクール本番、12月になればアンコン大詰めと、なかなか忙しい。そんな時期にピッタリと重なってしまったようなのだ。そのため、最終的には、小4を筆頭に大学生まで、第1期生メンバーは約30人前後となった。

 しかし、原町市スタッフはひるまなかった。

 本番で演奏者が足りない曲については、名取交響吹奏楽団など、近隣の愛好家たちの協力を得て、補強メンバーを注入することにした。

 さらに、各パートごとに、東京佼成WOやシエナWO、あるいはフリーランスで活躍するプロ・プレイヤー計10人を、ゲスト・トレーナーとして招いた。彼らは、入れ替わり立ち代わり、何度も原町市を訪れ、パート練習の指導を施した。

 レジデント指揮者には、オペラや岩国ミュージック・フェスタで活躍する矢澤定明を招き、これもまた、何度となく原町市を訪れ、練習を重ねた。

 それどころか、音楽監督に、あのアルフレッド・リード博士を迎え、YJWOのための新作ファンファーレを委嘱し、第1回コンサートに当人を招き、自作とともに指揮・初演してもらうことになった。

 ・・・と書くと、「どうせ、どこかの音大かイベントの仕事で来日したついでに、原町市に寄ってもらったのだろう」と思うかもしれない。しかし、YJWOの名誉のために書くが、それは違う。今回、リード博士は、YJWOのためだけに来日し、本番2日前に原町市入りし、リハーサル・練習を重ね、本番終了の翌日に離日しているのだ。

 要するに、このYJWOなるバンドは、市が運営し、一流プレイヤーがパート練習を指導し、一流指揮者が全体を指揮し、マエストロ・リードが新作を提供・指揮し、そして、発表場所として立派なコンサートホールが確保されているのである。こんなバンド、こんな幸せなバンド、ほかにあるか?

 筆者は、当初、「市営の青少年バンドができる」と聞いた時、まさか、そこまでやるとは思わなかった。いまだから言えるが、「アマチュア・バンドならカネもかからなくてラクなのだろう」程度の認識だった。

 しかし、この入れ込みようは、どうだろう。仄聞するに、新品の大型楽器も用意されたらしい。明らかに原町市は、単なる、市民青少年のための余暇活動の枠を超えた、本格的なバンドを目指していることが分るのだ。

 さて、次回は、そのYJWOの、記念すべき第1回コンサートの模様について、レポートしよう。

(後編を読む >>>)

福島県原町市HP http://www.city.haramachi.fukushima.jp/
原町市民文化会館「ゆめはっと」HP http://www.yumehat.or.jp/index.html

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