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シエナ・ウインド・オーケストラ
第17回定期演奏会
すべてヴィルトゥオーゾ(名人)のみによって構成されている
バンドであることを改めて感じさせられた



去る6月18日(金)、横浜みなとみらいホールにてシエナ・ウインド・オーケストラの第17回定期演奏会が開催された。筆者が今回初めてシエナの定期に足を運んだきっかけは、かのスーパー・トランペッター、エリック宮城氏の演奏を生で体験したいと思ったからであるが、その話は後にするとして、この演奏会を多少、生意気ながら振り返ろうと思う。

 

当日はみなとみらい駅を出たところからクイーンズスクエアを通ってホールまであちこちで楽器を持った中高生の集団があり、またロビーでも部活を終えて駆けつけたであろう彼らが軽食をほおばっている姿も見られ、そんなところにも、この楽団が人気を集めていることが伺えた。

 そうしているうちに舞台に今回の指揮者・金聖響氏と、シエナのユーフォニアム奏者・中村睦郎氏が登場した。チラシに謳われていた今年度全日本吹奏楽コンクール課題曲のミニレクチャーである。楽譜を持っての具体的な解説こそなかったものの、プロの音楽家が音楽にどう向き合っているか、そういった話を聞くことも有意義であったのではないか。

 プレトークが終わるといよいよ開演、まずは吹奏楽の定番《春の猟犬:A.リード》である。筆者がしばらく大編成の吹奏楽を聴いていなかったこともあって、曲が始まった途端にある種の懐かしさを覚えたが、しかしながら新鮮さを失わないダイナミックな演奏であった。

 そしていよいよ中高生おまちかねの課題曲、《I/吹奏楽のための風之舞:福田洋介》、《III/祈りの旅:北爪道夫》この2曲である。
 開演前のプレトークでは今回のために3日間の練習を行なったこと、そして聖響氏いわく「我々(音楽家)が楽譜から感じるありのままの演奏」とのことで、その極めてナチュラルな演奏は今まさに課題曲に取り組んでいる各人に良い参考になったのではないだろうか。

 第1部最後はフィリップ・スパークの難曲《ドラゴンの年》であった。極めて高い技術が要求される楽曲だけに、(半分程度の人数で演奏する金管バンド版と比べ)吹奏楽ではややもすると鈍重になってしまうものだが、しかしそこはシエナ。快速なtempoで駆け抜けた第一楽章《トッカータ》、圧倒的なキャパシティで魅せた第二楽章《間奏曲》、そして全員一丸となっての第三楽章《フィナーレ》。

 この大集団はすべてヴィルトゥオーゾ(名人)のみによって構成されていることを改めて感じさせられた。


 

休憩をはさんでの第2部、待ちに待ったエリック宮城氏の登場である。

《スタートレックのテーマ:A.コーレッジ》を吹きあげると早速万雷の拍手と、そしてそのとてつもない氏の演奏に対するざわめきが巻き起こった。
 この第2部では曲間で金聖響氏とのふんだんなトークが盛り込まれたのだが、その中で何とエリック氏が実は「隠れ低音おたく」であるということが暴露(?)されたのである。(中学生の頃ユーフォニアムを吹いていたとのこと)

 そんな氏が続いてフリューゲルホルンで演奏したのは真島俊夫のバラード・ナンバー《シーガル》。ハイノートヒッターであることばかりが強調される氏であるが、しかしまた違った一面を見せてくれた。(※ちなみに原曲はアルト・サックスと弦のために書かれている)

 3曲目にはクラシックの名曲《シェエラザード:N.リムスキー=コルサコフ/Arr.岩井直溥》。アドリブ中にとんでもない長さのロングトーンに突入してしまったかと思うと、しばらくしてチラリと時計に目をやり、観客がどっとなったところから今度は循環呼吸でクレッシェンドするという技、これもまた視覚を伴ってこそであるが、やはりステージを通じて特筆すべきは音圧であろう。

 ヤマハと共同開発したニューモデルの楽器と、見た目にもハワイの血を感じさせる大きな体躯から繰り出される音にはまさしく「圧力」が存在し、また明らかな指向性を持ったその音の刺激は生演奏でなければ絶対に体験できないものである。
 あまりの刺激に最前列に座っていた客の1人は耳をふさいでしまい、エリック氏が「こういう芸風なんで・・・」というと会場は爆笑となった。

 そして第2部アンコールは《ロッキーのテーマ》。先ほどのこともあってか舞台下手、上手に向かってもその音をダイレクトに伝えてくれた。
 こうして観客に衝撃を植え付けたステージであったが、こうしてゲストを迎えた時に思うことはバックとなったシエナのプレイが決して単なる伴奏ではなく、個性と個性の新たなぶつかりが発生するということである。
 鮮やかなピンク塗装のフルートでアドリブを聴かせてくれた金野紗綾香女史、エリック氏と競うかのように張り切っていたトランペット・セクションも印象的だった。


 興奮冷めやらぬ中、舞台は第3部へ。この演奏会のメインとなったのはモーリス・ラヴェルのバレエ音楽《ダフニスとクロエ 第2組曲》である。
 管弦楽作品を吹奏楽で取り上げることについては批判する向きも多いが、しかしそれはプロの管弦楽とアマチュアの吹奏楽を同列に見てしまうからであろう。

 内外を問わず第一線で活躍する金聖響氏が、あえて吹奏楽で「管弦楽の魔術師」と形容されるラヴェルのレパートリーを取り上げる。そこに何の意図もないはずがなく、聖響氏とシエナはまさに「見事」としか言いようのない素晴らしい演奏を聴かせてくれた。

 筆者の知識のなさがバレてしまうので細かいことは書かないが、富樫鉄火氏のプログラムノートにある「究極にまで達したオーケストレーションが見事に展開する」この曲を、また2002年に発表されたばかりの真島俊夫氏の新編曲を振る聖響氏の後姿には凄まじいまでのオーラが感じられ、そしてシエナはそれに存分に応えることができたのではないだろうか。

 演奏が終わると(吹奏楽におけるこの曲のイメージ上)半ば予想通りに客席から「ブラヴォー!」の声が飛んだが、この演奏は真にブラヴォーなものであったといえよう。
 なおこの曲でもフルートの金野女史が素晴らしい演奏を聴かせてくれたことを付け加えておく。そろそろこういった個々の奏者に対しても、カーテンコールの際にブラヴォーが飛ぶようになるともっと自然なブラヴォーコールにつながっていくと思うのだが。


 アンコールにコンクール課題曲IV:《鳥たちの神話》(藤井修)が演奏されたかと思うと、曲が終わるや否や3階R席からサックスを持って駆け出す女の子が。それに続いて館内のあちこちで楽器を準備され、聖響氏の「どうぞステージへ!」という声を待たずして多くの観客、下は小中学生からスーツ姿のサラリーマンと思しき男性までが舞台に駆けつけた。
 毎回恒例となった締めの《星条旗よ永遠なれ》(J.P.スーザ)、いったい今回は何人がステージに上ったのであろうか。どう少なく見ても3ケタは確実に居たのではないか。初めてのステージ突入に緊張している子、もう何度も来ているのか団員と笑顔で会話をする子、実にいろんな姿が見られた。そして曲が始まると持参の笛を吹く高校生の姿があり、またチェレスタ(もちろんメンバーだが)までもが一緒になっての星条旗、客席の人数が減ったことを感じさせない盛大な拍手を持って演奏会が締めくくられた。

 演奏会が終わっても中高生は大忙し、今度は楽屋口に走って団員が現れるのを今や遅しとばかりに待ち受ける集団があっという間に形成されていた。
 ステージが終わってからも愛されているこのウインドオーケストラの特徴が良く現れているなと思うとともに、今この文章を読まれている皆さん、今度はあなたも一緒にステージに上がってみてはいかが?


 CDには何回でも聴けるというメリットがあっても、先に書いたようなエリック氏の音圧、エネルギッシュながらもトークに柔らかい印象を与える聖響氏の関西弁、会場の温度湿度、そしてメンバーと全く同じ目線で演奏できる星条旗、これらのことはライヴでなければ絶対に体験できないものであるし、また満員のステージが続けばこそ彼らのCDも多数リリースされることだろう。(筆者は今回のダフニスが早く録音されることを願っている。)

 というわけで、SIENAの演奏はLIVEで聞くべし!!

※シエナWO オフィシャルサイト〜「星条旗よ永遠なれに楽しく参加する法!!」
http://sienawind.com/seijyouki.htm

 



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