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横浜開港祭 ザブラスクルーズ2004
1日でこれだけ豪華な演奏が聴ける幸せ!


実際に21世紀を迎えた今、我々の生活は高度な科学技術に囲まれ、少年の頃の私には想像も出来ないような空間が広がっている。

1854年3月8日、その全てはここから始まった・・・

 その日、横浜村の空は青く澄み渡っていたという。礼砲轟く中、ペリー提督が浜辺に降り立ったその時、日米両国の出会いを華々しく演出したのは当時の軍楽隊であった。そう、150年前のその日、それは日本に吹奏楽が初めてやって来た日でもあるのだ。

 そして、2004年6月12日、日米和親条約締結&スーザ生誕150周年を記念し、横浜みなとみらいにおいて、《ザブラスクルーズ・チャリティコンサート》が開催された。

 オープニングを華々しく飾ったのは、【横浜市民吹奏楽】だ。
酒井格氏の秀逸な編曲による「横浜市歌」に続き演奏されたのが「The Chantyman's March」(スーザ)である。この曲は船乗りの歌う船歌のメドレーになっており、古きよきアメリカの雰囲気に溢れている。まさに文明開化の雰囲気を味わせてくれた。

 続いて、金井喜久子作曲による、祝典序曲「飛翔」。遠い海の底からのメッセージを受け、大空へと力強く翔ばたいていくような、生命感を感じさせる演奏であった。そして、最後に演奏されたのは、このブラスクルーズの為の委嘱作、「イスラ・デ・ピノス」(真島俊夫)。このカクテルの名を持つ曲は、明るくファンキーな真島俊夫ワールドを存分に楽しませてくれた。[文明開化]で異文化と出会い、それを自らの文化へと昇華させ大きく[飛翔]し、明るい未来をイメージさせてくれる[ファンキー]なラスト。横浜の素晴らしさを魅力いっぱいに伝えてくれたステージであった。

 次にステージを飾ったのは、【グラールウインドオーケストラ】である。
まず演奏されたのが、C.T.スミス作曲による「フライト」。これは、パッヘルベルのカノンのモチーフを散りばめたチャーミングさと、トランペット3人とバンドとの息もつかせぬ掛け合いの鮮やかさを持つ、華々しい曲である。明るい直管の響きを持つグラールの魅力を、存分に発揮してくれた。

 続いて、今年のコンクール課題曲「風之舞」(福田洋介)。ここでも、グラールは色彩感豊かな演奏を披露し、ラストの「ウィリアムテル」序曲〜スイス軍の行進(ロッシーニへ。このあまりにも有名な名曲を、最後まで躍動感と緊張感を失わずに創り上げた演奏は見事であり、会場も満場の拍手に包まれた。
 そして、アンコール「海を越える握手」。この勇壮な演奏は、150年前に広大な太平洋を越え、日本へやって来た海の男達に捧げられる事だろう。


 続いて演奏した【土気シビックウィンドオーケストラ】は、なんと言ってもこの日の白眉であった。
 加養浩幸氏の情熱的でありながら詩情あふれる指揮振りに、楽団も精緻なアンサンブルと、色彩感と透明感を備えた豊かな音色で応える。本物の音楽を見せていただいた。
 1曲目の「アルプスの詩」(チェザリーニ)では、アルプスの日の出、壮大な山々、眩しい程の雪景色、雪解けの清冽なせせらぎ、牧場の芝生の鮮やかな緑、それをのどかに食む牧牛、そういった光景が今まさに眼前に広がっているような、素晴らしい演奏であった。最後の和音はあまりに美しく、パイプオルガンを使っているのではと、思わず確認してしまったほどだ。

 続いて、「マゼランの未知なる大陸への挑戦」(樽谷雅徳)。
 この曲は、世界一周を目指した大航海の途中で亡くなったマゼランが、もし生きていたなら…という未知の世界をイメージした作品。偉大なる旅立ち、旅先で出会う異国の街と人々、空も海も大地も触れるもの全てを紅く染める夕日、雄大な海に抱かれる熱いロマン。土気シビックは、この壮大なテーマを、ステージ上に見事に描き出してくれた。聴く者を熱くせずにはおかない彼らに、改めて心からの賛辞をここに贈る。


 続いて、サンバのリズムで華やかに登場したのは【陸上自衛隊 東部方面音楽隊】だ。 そして、そのまま「雷神」(スーザ)のサンバ・バージョンへ。陸上自衛隊は、直管、特にトロンボーンの切れ味が素晴らしい。それが、続いての行進曲3曲(「黎明」/黛敏郎、「自由の鐘」/ゴールドマン、「忠誠」/スーザ)にも、シャープさと躍動感を添えていた。
『吹奏楽はマーチに始まりマーチに終わる』、と言われるほど、マーチは奥が深く、良い演奏を聴かせることは本当に難しい。そのマーチを、陸上自衛隊は非常に優れたバランス感覚で、見事に演奏してくれた。
 そして、彼らは、続いての美空ひばりの名曲「川の流れのように」(真島俊夫編曲)と、「海鳴り」(高橋ひろみ)で、日本人の和の心を揺さぶる演奏を披露してくれた。特に「海鳴り」では、海の静謐な表情と、轟音と共に全てを飲み込む荒れ狂う表情を、和太鼓の原初的な響きに乗せて、”和”の海を再現した。
 盛大な拍手に応え、アンコールに贈られたのは、「星条旗よ永遠なれ」(スーザ)のジャズ・バージョン。ここでも、直管の独壇場に会場はヒートアップ。陸上自衛隊の制服に身を包んだ演奏者達に、再び盛大な拍手が贈られた。

 現在、日米関係は、2国間を越えて、非常に複雑な様相を呈している。ここでは政治的な物言いは避けるが、いつか世界中の人々がこの様な熱い拍手を贈り贈られる関係になれることを願ってやまない。

 そして、この日のフィナーレを飾ってくれたのが【洗足学園音楽大学ブリティッシュ・ブラス】である。
 このステージでは、ヤン・ヴァンデルロースト指揮により、自作作品が演奏された。一曲目は「JUBILUS」。まさに歓喜・歓声(ユビルス)の名に相応しい、華々しい演奏であった。
 続いて、日本初演となる「ALBION」。アルビオンとは、古代イングランドの事を指すらしいのだが、曲は3箇所に配置されたトランペットの掛け合いによって始まる。そして、そのトランペット達がだんだんと1人ひとりランダムに動き出していく中、暗いテーマが中低音で演奏されるが、打楽器の合図と共に、思い思いにうごめいていたトランペット達が一斉に席に着く。そこから合奏が垣間見せるカオスの中から、先ほどのテーマと共に生命の胎動が生まれ、徐々に熱を帯びてくる。そして最後は、ブラスバンド特有の華々しいサウンドと共に、力強くフィナーレを迎える。
 非常に複雑な構造を持つ曲だが、前衛劇のようなヴィジュアルに訴える要素もあり、聴衆の心にストレートに入ってくる演奏であった。

 そして、この日のプログラムの最後は、ヴァンデルロースト作品の中でも非常に高い人気を持つ「カンタベリーコラール」。ブラス・バンドの編成にパイプオルガンを加え、ピュアな響きに荘厳さが加わり、圧巻といえる演奏を展開してくれた。
 鳴り止まない拍手に、アンコールは「スーザ・マーチ」と「アルセナール」。フレッシュな演奏の余韻の中、ブラス・クルーズは幕を閉じた。


 この日の感想をひと言で言い表すとすれば、『楽しかった!!』に尽きる。

 1日でこれだけ豪華な顔ぶれの演奏が聴けるのだ。そのうえ、今回は一般バンドから自衛隊、そしてヴァンデルロースト指揮による音大生のブラス・バンドまで、非常に幅広く個性的な面々の演奏であり、4時間という時間も、本当にあっという間であった。
 このような楽しい合同演奏会が、もっと増えてくれれば、と切に願っている。

 


横浜開港祭 公式HP http://www.the-brass-cruise.org/
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