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21世紀の吹奏楽 第7回「響宴」レポート

日時:2004年3月14日(日) 14:00〜
場所:東京芸術劇場 大ホール
レポート:織茂 学(ピアニスト)
http://www.fides.dti.ne.jp/~m-orimo/



 近年、毎年日本全国で次々と素晴らしい邦人の新作が生み出され、初演・再演されていく吹奏楽の世界。温故知新という“諺(ことわざ)”の通り、先駆者達の素晴らしい作品を演奏し、勉強することの大切さに加え、“今を生きる私たち”が、同じく“今を生きる作曲家”の、それも、“今うまれたばかりの作品達”を意欲的に取り組むことも、とても大切であると私は思います。

 

今年もその先駆けとも言うべき「21世紀の吹奏楽“響宴”」が、3月14日東京芸術劇場にて開催されました。今回は、73曲の中からより良作の14曲に加え、委嘱作品1曲の計15曲が、全5バンドによる素晴らしい演奏によって披露されました。

 昨年の曲数17曲(兼田作品を除いて)に比べると2曲ほど少なく、1曲の演奏時間も8分以内の曲が多く、演奏会自体がスリムになりどうなるのだろうと思っておりましたが、逆に1曲1曲が更に内容が濃くなっていました。今までとは良い意味で少し変化のある、印象の違う“第7回響宴”でした。

 では早速、その演奏会を覗いて見ましょう。

 今回のレポートも昨年のレポートと同様に、プログラム順に書かせていただくのではなく当日のプログラムノート等を参考に、私が考えた大まかな区分(4区分)を元に話を進めさせていただこうと思います。少しでも選曲の参考になって下されば幸いです(各項目の曲順は演奏順です。)
 

■演奏会のオープニングや第1部にプログラミングできそうな曲


 まず初めに、演奏会のオープニングや第1部にプログラミングできそうな曲として次の4曲を取り上げてみたいと思います。
 
 1曲目は「《フェスティバル プレリュード》/小長谷宗一」です。
プレリュードというだけに演奏会の1曲目を飾るにとても相応しい華やかさがあります。安定感のある小長谷作品らしいオーケストレーションが魅力だと思います。
 
 2曲目は「《メモリアル・マーチ2002》/真島俊夫」です。
冒頭はファンファーレで始まります。この曲も演奏会の1曲目に相応しいのではないでしょうか。真島作品の独特なおしゃれな和音進行が、従来のマーチとは一味違った「ライト」なイメージで、とても爽やかさを感じます。

 
 3曲目は「《ファンファーレIII〜from Fantasy World》/三浦秀秋」です。
若々しいフレッシュな作品です。作曲者のプログラムノートにも書いてあるように、様々な映画音楽の引用がちりばめられているせいか、とても親しみやすい作品です。これからの作品に期待できそうです。

 4曲目は「《ファンファーレ、入場とコラール》/内藤淳一」です。
昨年の響宴委嘱作品《新しい時代を越えて》と同様、架空の式典や祝祭をイメージした作品なので、1曲目に相応しい作品だと思います。内藤作品らしい優美なメロディーと対旋律が演奏会をより一層引き立ててくれるのではないでしょうか。


■演奏会や催し物際の選曲として効果的な曲

 次に,演奏会や催し物際の選曲として効果的な曲を挙げてみたいと思います。

 まず1曲目は「《イルミナッション「若き日への蜃気楼」》/保科 洋」です。
作品が対位法的に書かれているために、音量のバランス、速度の設定などと、合奏技術はやや難しいと感じます。プログラムノートによると、全曲を通して楽譜には記載されていない“アゴーギグ”があるようで、これらの解釈と表現がやや難しい部分であるようです。

 2曲目は「《「稜線の風」−北アルプスの印象》/八木澤教司」です。
北アルプスの情景を八木澤氏らしい親しみやすいメロディーと、重厚なオーケストレーションによって書かれた作品です。中間部では地獄谷の情景をそれぞれの楽器の様々な奏法によって描写されています。北アルプスの山々が目に浮かび、大自然の恵みや偉大さが感じ取れる作品だと思います。演奏効果も高く、コンクールでも使える曲の1つだと思います。

 3曲目は「《吹奏楽の為の「胡蝶の夢」》/坂田雅弘」です。
この曲は、楽器の音域・演奏人数ともに演奏しやすい作品です。曲想は幻想的な世界観を持ち、タイトルの通り聴衆を夢と現実との狭間へと誘う不思議な感覚を覚えます。会場の雰囲気を変えることのできる作品だと思います。

 4曲目は「《クラリタス−シンフォニック・バンドのための断章》/後藤 洋」です。
「明瞭・透明」を曲名としたこの作品は、音による色彩や透明感などを表現することを求めているようです。また途中にソリスティックなものが出てきて、自由度が高い感じがするためかグレード5と難易度は高いですが、オーケストレーションが良くとても効果的な作品だと思います。

 最後は「《神の領域 カルナック》/阿部勇一」です。
曲想とタイトルが非常にマッチした作品だと思います。演奏人数が若干多めではありますが、演奏会プログラムの1部の締めくくりに相応しい、重みのある作品だと思います。建造物の壮大さを細かい情景描写と作曲者本人の感動を素直に表現した作品ではないでしょうか。表現・技術ともにやや高度ではありますが、演奏効果が高く、コンクールにも向いている作品ではないでしょうか。


■演奏会でメインになりそうな曲

 続いて、演奏会でメインになりそうな曲として次の曲を挙げてみたいと思います。

 1曲目は「《遮光の反映−吹奏楽のために》/中橋愛生」です。
プログラムノートに「新しい試みを」と書いてありますが、現代音楽としての広い範囲で聴くと少々古いと感じます。多数の音群を様々な楽器の位置で鳴らすことで,響きの反射を試みているようですが、その効果は薄かったのはないかと思います。演奏会の柱にはなるかと思いますが、演奏技術の面からみてとても難しい作品だと思います。ですが作曲者の意欲的な取り組みは良いことだと思います。これからの作品に注目したいと思います。

 2曲目は「《3つの海の情景》/鈴木英史」です。
深みのある海を見事な曲想とオーケストレーションによって再現された、とても高尚な作品だと思います。太古の昔から海がずっと見続けていた情景を鈴木氏独特の壮大さと繊細さがバランスよく表されています。第一曲から第三曲までを続けて演奏する作品なので、一瞬たりとも息が抜けない作品だと思います。

 3曲目は「《吹奏楽のための叙情詩「ジャンヌ・ダルク」より》/坂井貴祐」です。
私がこの作品をこの区分に組み込んだのは、今回演奏された第1部と今回未発表の第2部の、2つの部分からできているからです。昨年の坂井氏の響宴作品とはイメージが違い、情景の描写の壮大さやメロディー、また編成の面から見ても演奏しやすいと思います。ただ、1つの物語としては第1部だけでは完結しないので、第2部も合わせて演奏する方が良いと思われます。ただ総演奏時間が約19分というのは、体力のあるバンドでないと難しいのが残念です。

 4曲目は「《La suite excentrique》/天野正道」です。
50人は今回1番大きな編成です。今までの天野作品とはイメージが違う作品です。4楽章形式で、演奏時間12分ではありますが、その長さを感じさせない曲の内容、構成、オーケストレーションは流石の一言です。作曲者のプログラムノートによると、楽章ごとに分けても、全楽章続けて演奏するのでも構わないようですが、どちらの演奏方法を選ぶかによって、テンポの設定や表情の付け方などが変わってくるように作られているため、指揮者のセンスが必要となってくる作品だと思います。

 5曲目は「《KOREAN DANCES》/高 昌帥」です。
当初私の想像では、タイトルからかなり民族色の強い作品かと思いましたが、その予想を良い意味で裏切る、韓国音楽と西洋音楽の融和が上手くなされた作品です。リズムに特色があるため、その感覚を掴むのが難しいかもしれませんが、神大の演奏が芸術的で魅せる演奏でしたので、バンドと作品が良く合っていたと思います。


 最後に、今回の委嘱作品。
 
 今回は櫛田作品「《Foojin-雷神》/櫛田てつ之扶」1曲でした。櫛田作品ならではの和太鼓などの使用により、日本と西洋との融合「和」をモチーフにした壮大な作品です。風神・雷神の威厳尊厳とそれをとりまく世界観を5つの場面に分けて作られています。それぞれの場面もさることながら、場面が変わる時にある“間”にも緊張感があり、全てにおいて独特の世界があるように感じます。

                           ※

 今回も私の主観で上記のように書かせていただきました。今回の演奏会の模様もライブCDとして発売されています。会場で聴くのとCDで聴くのとでは若干の違いがあるかと思われますが、当日感じた素直な感想を書かせたいただきました。


 


【関連CD】
21世紀の吹奏楽「響宴VII」〜新作邦人作品集/KYO-EN VII
http://www.rakuten.co.jp/bandpower/457689/540544/

〜プログラム〜
●龍谷大学学友会学術文化局吹奏楽部 指揮:若林 義人
   http://ryukoku-suisogaku.com/

・フェスティバル プレリュード/小長谷 宗一(約4分・40人)
 〜おおむた実行委員会委嘱〜
   http://www.band-p.co.jp/konagaya/

・イルミナッシォン《若き日への蜃気楼》/保科 洋(約10分・32人)
 〜高槻市音楽団管楽部委嘱〜

・遮光の反映−吹奏楽のために/中橋 愛生(約8分・31人)
 〜長崎市民吹奏楽団委嘱〜

・メモリアル・マーチ2002/真島 俊夫(約5分・36人)
 〜福井県鯖江市吹奏楽フェスティバル・初演〜


●浜松交響吹奏楽団 指揮:浅田 享
   http://hswo.jp

・「稜線の風」‐北アルプスの印象/八木澤 教司(約9分・40人)
 〜富山ミナミ吹奏楽団委嘱〜
   http://www.horae.dti.ne.jp/~yagisawa/home/

・ファンファーレIII〜from Fantasy World/三浦 秀秋(約5分・37人)
 〜東京都立大泉高等学校委嘱〜
   http://www.sound.jp/orchestra/

・3つの海の印象/鈴木 英史(約10分・41人)
 〜海上自衛隊佐世保音楽隊委嘱〜


●東海大学付属高輪台高等学校吹奏楽部 指揮:畠田 貴生

・ファンファーレ、入場とコラール/内藤 淳一(約5分・38人)
 〜東北福祉大学吹奏楽部委嘱〜

・吹奏楽の為の《胡蝶の夢》/坂田 雅弘(約6分・29人)
   http://www1.odn.ne.jp/maurice-ravel/

・Foojin−雷神<委嘱初演>/櫛田 てつ(月失)之扶(約12分・36人)


●川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団 指揮:福本 信太郎
   http://www.asahi-net.or.jp/~gx7m-skmt/

・クラリタス‐シンフォニック・バンドのための断章/後藤 洋(約7分・40人)
 〜中央大学学友会文化連盟音楽研究会吹奏楽団委嘱〜

・吹奏楽のための叙情詩「ジャンヌ・ダルク」より/坂井 貴祐(約8分・35人)
 〜航空自衛隊中部航空音楽隊委嘱〜
   http://www.sakai-takamasa.net/

・神の領域 カルナック/阿部 勇一(約8分・47人)
 〜秋田県立新屋高等学校委嘱〜


●神奈川大学吹奏楽部 指揮:小澤 俊朗
   http://www.ctktv.ne.jp/~trombone/

・La suite excentrique/天野 正道(約12分・50人)
〜埼玉県立与野高校吹奏楽部委嘱〜

・KOREAN DANCES/高 昌帥(約16分・36人)
 〜大阪音楽大学委嘱〜

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