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スペシャル:石本和冨

WONDERFUL WORLD
石本和冨の“これを聴かねば!”吹奏楽掘り出し名盤プレビュー

No.2

 2006年の吹奏楽コンクール全国大会CDを聴く! 
中学編

 一昨年(2005年)より、全国大会のCDがキングレコード(株)から発売されるようになり、中学・高校の部は全団体課題曲と自由曲が収録されるようになりました。
 
 私自身、前から『何で課題曲もCDに入れてくれないんだろう? 自由曲だけ聴いたって、評価は課題曲と自由曲の総合点でされるから、課題曲を聴くのって、メッチャ大事なのに』と思っていたので、非常に喜ばしい限りです。

 課題曲を適当に練習して、自由曲ばかりに力を入れても、全く意味はありません。課題曲を疎かにしているバンドが非常に多いので、改めて言っておきます。『コンクールは、課題曲と自由曲の総合評価、点数配分も全く同等』。
 もう一つ言わせてもらうと、『コンクールは課題曲冒頭の数小節の出来で決まる』ということです。過去の指導先全てで言った言葉ですが、『とにかく課題曲!自由曲は後回し!!』というのが、私の鉄則でした。
 コンクール当日まで滞在できたことが何回かありますが、数団体は、課題曲一発目の音を出した瞬間に『はい、あなた達金賞、おめでとう!』となる演奏に出逢えます。

 指導先の顧問と本番の舞台を終えた後の会話で、『○○校は頭一発で金賞でしたね』と言ったところ、「・・・その頭を聴いた瞬間に金賞というのはどういう演奏を言うのでしょう?」と質問されてしまいました。
 
 口ではなかなか説明できないので、実際にその○○校の音を買い、指導先の学校で聴いてもらいました。
『ね、実際に聴いて見れば分かるでしょう?』
「・・・いや、私にはよく分からないのですが」
と返されてしまいました。

 私自身、この頭の音一発で『はい、君達金賞! おめでとう!』という違いが理解できるようになったのは、今から23年前の、東京都中学校A組予選を聴いた時からですので、誰でも分かることだと思っていました。
 
 いわゆる中学校・高校の「スクール・バンド」は、顧問の先生方が指導なさっていると思いますが、長年同じ学校にいると、その音だけを聴き続けてしまうことになるので、客観的に「自分達のバンドは、今どういうサウンドになっているんだろう?」と、視点を変えてみるのも大事かと思います。自分達の演奏を録音して、それを聴くのも、練習には不可欠なことです。

 課題曲を聴き比べることによって、新たに気付く点が絶対に出てきます。そういう意味でも、課題曲の聴き比べは、非常に効率の良い練習方法の一つと言えるでしょう。

 是非、買ったCDは全てを聴いて欲しいです。

 では、2006年の全国大会のCDのコメントにまいります。
 今回は中学校編です。高等学校編・大学編・職場編・一般編は、次回に取り上げます。次回は『マジでこの演奏には驚いた!』の一枚も合わせますのでお楽しみに(←意外な一枚ですよ)


■中学校編I 
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-1014/

 非常に面白いと思ったのが、東京代表の羽村市立羽村第一中学校の演奏です。私自身が東京出身なので、『贔屓目で見て
るのかな?』と疑問に思ったので、本当に何度も聴きました。
 でも、やはり面白いんですよね。残念ながら銅賞でしたが、『確かに「あらい」けど、「粗い」じゃなくて「荒い」なんだよな〜。勢いがあって中学生らしくていいと思うんだけど』と、聴く度に感じました。

 ただ「うるさい」だけの演奏ではないので、騙されたと思って、是非聴いてみて下さい。『これは色々な人に聴いてもらいたいな』と思う演奏です。


■中学校編II
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-1015/

 このCDは、はっきり言って『即買い!』です。関西代表の宝塚市立中山五月台中学校の課題曲IV(今回のシリーズで課題曲IVが収録されているのはこのCDのみ)と自由曲も『はぁ〜、これで銀賞か。点数が出るとは言え、厳しいな』と思う、素晴らしい演奏でした。
 
 それと、北陸代表の津幡町立津幡中学校の自由曲「サムソンとデリラ」よりバッカナール。これは非常にハイテンションな演奏です。実際に聴くと、『これ、ある意味反則だな(笑)(←微笑ましいという意味です)』となる演奏でした。ここまでやるんだったらOKです。金賞受賞、おめでとう。

『こりゃ今年流行るぞ』と直感した中国代表の津山市立北陵中学校の自由曲、喜歌劇「ロシアの皇太子」セレクションも素晴らしい演奏です。個人的に、中学編を全部聴いて最も印象に残りました。中学生らしい爽やかな演奏で、聴く人の心を暖めてくれます。


■中学校編III 
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-1016/

 東関東代表の柏市立酒井根中学校の、中学生らしい爽やかな「ローマの祭」よりが楽しめます(と言っても、技術的には中学生離れした高い技術を持っています)。

 それと、このCDでも『これ、面白いじゃん』と思ったのが、東京代表の足立区立第十一中学校の演奏です。賞は銅賞なのですが、クセになる演奏とでもいいましょうか、一回聴くと強烈な印象を与える演奏です。
 課題曲も緻密とは言えませんが、何か味のある演奏で、自由曲の方も(自由曲が超強烈)凄いんです。特に曲の終わり方が、まぁ、あざといと思われる方もいると思いますが、私はハマッてしまいました。正直かなりクセのある演奏なんですが、言い換えると、「このバンド(なおかつこのメンバー)でしか出せない、独自のサウンド」なんです。
 以前、吉永先生と飲む機会を持てて、直接聞いたのですが、「銀はいらん。金か銅か、うち(県立西宮高等学校)はそれしかない」とおっしゃってました。この演奏は、その部類に入ります。
 是非聴いて欲しい演奏の一つです。


■中学校編IV 
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-1017/

 西関東代表の甲斐市立敷島中学校の演奏は必聴! 前に書いた『課題曲頭一発目の音で「はい、君達金賞!おめでとう!!』の演奏です。課題曲全体を通せば、『ちょっとオーバーだな』な箇所もありますが、驚きのサウンドです。自由曲のスペイン奇想曲も、最近では余り聴く機会が少なくなっている曲ですが、この演奏は、再びこの作品に命を吹き込んでくれました。コンクールで演奏する以上、カットは仕方ないことです。『全曲演奏してこそその作品』という持論はありますが、忘れられていた曲を、再び登場させた功績は非常に高いと言えるでしょう。
 演奏も抜群(スネアでびっくりするので注意してね)、是非聴いて下さい。
 
 最近演奏されることが少なくなった曲と言えば、北海道代表の旭川市立永山南中学校の自由曲、「エル・サロン・メヒコ」もその一つですね。
 コンクールでこういう曲を聴くのも、非常に新鮮です。課題曲の演奏も悪くないし、自由曲もいい感じ。私の中では金賞です。


■中学校編V 
http://item.rakuten.co.jp/bandpower/cd-1018/
 
 金賞三連発なので、お得なCDでしょう。東海代表の鈴鹿市立千代崎中学校の課題曲は、私も気に入っています。立ち上がりは不安定ですが、徐々にいつもの調子を戻したという感じですね。
 勢いがあって流れる水のように繋がって行く部分は、聴いていて楽しいです。指揮者の気合も終わりに入っています。自由曲の歌劇「トゥーランドット」よりの、冒頭のEuph soloはGood!

 東関東代表の川崎市立東橘中学校の自由曲「スペイン狂詩曲」よりの冒頭部分は実に見事! Picc、Flの音色には『君達は本当に中学生?』と聞きたくなってしまいます。少し曲の流れに不自然な部分も見られますが、全体を通してみれば、見事な演奏になっています。
 この曲は、終わり方が難しいのですが、この演奏に関しては、私は『お見事!』としか言えません。


待て、次回! お楽しみに!!!

(2007.01.22)


 
石本和冨プロフィール:
Ishimoto Kazufumi

自己を見つめ直すための長い旅を終えて、2007年1月に再び吹奏楽界に舞い戻ってきた伝説の吹奏楽スーパーバイヤー。アメリカをはじめとする多くの吹奏楽関係者とのネットワークを駆使し、世界中から新旧の吹奏楽作品をチェック、独自の視点で、吹奏楽ファンのための作品を紹介し続けることを自らの使命とする男。自身もテューバを吹きで、ここ数年はスクールバンドの指導なども行なっており、現場を知り尽くした者だからできる、曲選びや演奏のアドバイスには高い評価を得ている。
 ちなみに、今や伝説となった「ヨーロピアン・ブラスバンド選手権1992」に収録されているスパーク/ドラゴンの年を、「鼻血ドラゴン」と名付け、型破りな大量発注枚数でメーカーに再プレスさせ、このCDを日本全国に行き渡らせたのも実は彼だったり、アンサンブル・コンテストで人気の高いG.リチャーズ「高貴なる葡萄酒を讃えて」が収録されたロンドン・ブラス演奏のCDを廃盤から救い出したのも、実は彼なのである。その他、アメリカ海兵隊バンド「5枚組ボックス」など、ライナーノーツの執筆も多数あり。吹奏楽ファンにとって、実に頼りになる人物なのである。

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