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スペシャル:石本和冨

WONDERFUL WORLD
石本和冨の“これを聴かねば!”吹奏楽掘り出し名盤プレビュー

No.1

 2006年の吹奏楽コンクール全国大会を聴く! 
特に印象に残ったバンド編

「おーい、もういい加減休養はいいだろ?そろそろ原稿書け!」と小太郎氏に言われて数年経過。
一般の大勢の方からも「もう書かないの?」と言われました。
『・・・そろそろ書くか』と、本当に重い腰を『よっこらしょっ!』と上げて、やっと再開する事になりました。
これからもよろしくお願いしますね。


『再開最初のネタ、どうしよう』と悩みましたが、2006年の吹奏楽コンクール全国大会のCDのコメントにしました。(本当は高校の部を生で聴いた際、小太郎氏から「レポート、よろしく」と頼まれていたのですが、書けずに現在に至ってしまいました、ごめんなさい)

 コメントの前に、高校の部(前半)を聴いていた時、とんでもない事態が起こったので、まずはそれを。


◎バリバリ婆さん出現

 昨年(2006年)から、普門館は指定席と自由席とに別けられるようになりました。私は指定席のチケットを手に入れられなかったので、自由席(前半の部は「33列-左-8」、後半の部は「33列-右-23)で聴いていました。 
 
 ちょっと話が前後しますが、これを読んでいただいた後の方が、より「うんうん」と分かってもらえると思うので、書いておきます。

 1992年、当時は経理の仕事をしていたので、10月31日(土曜日)の月末はメッチャ忙しいのは分かっていました。それでも、上司に『すみません、10月31日に有給をいただきたいのですが』と、申請。

「理由は?」と上司に聞かれ、『吹奏楽の全国大会に行くためです』と、正直に返答。
上司は完璧に「ムっ」としましが(当たり前です)、「お前が吹奏楽好きなのは分かってる。仕方ないけど休んでいいよ。
 ただ、他の人に正直な理由は話すな。何か聞かれたら“家庭の事情で”でごまかせ」と言われ、休みが取れました(○○部長、ありがとうございました)。

 1984年から、私は徹夜で並んで、「21列-右-6」を死守するようにしていました。その日も何とかその席を確保でき、『やれやれ』と安堵。しかし、冷静に聴けたのは束の間でした。

 私の座っている座席の後列に、どうやら出場団体の父兄の方が十人程、横一列に座っていました。団体名は明記しませんが、どの高校の父兄だかは分かっています。

 その団体の演奏が終わった後、「素晴らしかったわね」と言い合い、涙しているのを見た時は、胸が熱くなりました。しかし、これは甘かった。これから地獄が始まります。

 自分達のお子さんの演奏が終わった後、やけに後ろから「ガサガサ」という、ビニール袋をこする雑音が始まり、最初は遠慮がちでしたが、そのうちに後ろの列全体でその「ガサガサ」音がfになってきました。

 まだ、演奏中にも係わらず、

「ねぇ奥さん、お昼どうします?」
「そうですねぇ、この辺は食べ物屋さんなさそうですし」
「あ、私がお弁当を買ってきます」
「あら、お弁当売ってるの?」
「えぇ、さっき見ましたから」
「じゃぁお願いしようかしら」

などの会話がmfでずっと続きました。

 お弁当を買って、戻ってきたので『その内静かになるだろう』と思っていましたが、甘かったです。お弁当はビニールの袋に入っていました。さて、演奏中にも係わらず、

「はい、奥様、あちらに送ってもらえます?」
「あぁ、手で渡していけばいいわね」
「はい、奥様」
 という会話に加えてビニール袋の「ガサガサ」がfになりました。

 その軍団(失礼ですがこう言わせてもらいます)には子供さんもいて、
「ねぇ、ママ、飽きたよ〜」
「おとなしくしてなさい!」
「ママァ、お菓子」
「仕方ないわね、その袋に入っているから食べてなさい」
「ヤッター!」
という場面もありました(勿論演奏中です)。

 当然子供は飽きます。すると椅子をガタガタ鳴らし始めました(くどいですが、演奏中です)。

 この状態が続いた後、
「やっぱり○○高校は凄いわねぇ」
「伝統がありますしねぇ」
「それに比べて○○高校は酷いわねぇ」
「ねぇ」
の会話(演奏中です)で流石に切れました。

 その演奏が終わった後に、立ち上がり振り返って
『あなた達、うるさ過ぎます! 演奏中は静かにして下さい!
さっきからビニールの音をガサガサさせたり、他校の演奏に声高にケチを付けて!
それに、普門館はホール内飲食禁止です!
食べるならロビーに行って食べなさい!!!』

 流石にこの剣幕に驚いたか、その場は「すみません」。しかし
その後の団体の演奏中、
「なぁに、この人」
「ねぇ、私達そんなに大きな音立ててないわよねぇ」
の会話が・・・

 すかさず首だけ後方に向け、睨みました。そうすると静かになりましたが、結局この軍団は最後までうるさくしていました。
私は常に後ろがうるさくなったら振り向いて睨むの繰り返し。

 全国大会に出場される学校の顧問の方、部員だけでなく、関係者(父兄、友人など)にも館内でのマナーを連絡しておいて下さい。本当にお願いします。

 長くなりましたが、過去にこういう事がありました。

 さて今年、埼玉栄高校の演奏中に、これを上回る婆ちゃんが登場(注:埼玉栄高校の方には一切関係がありません)。

 トップ・バンドの一つに上げられる学校であるので、普門館全体が緊張感に包まれていました。課題曲が演奏されてから1分くらい後、私の座席の後ろの列から、「バリバリ」という音が聞こえ始めました。

 『え、バリバリ?』、最初は、マジックテープを剥がす音だと思っていたのですが、それにしては長過ぎます。また、その「バリバリ」音は、演奏がが盛り上がって行くにつれ、クレッシェンドしていきます。

『一体何の音だろう?』と不思議に思っていたのですが、そのうちに「おい、静かにしなさい」という声が聞こえたので、『あぁ、子供が何かして親が注意したのかな?』と聞き流しました。
 ただ、演奏中にそういう雑音を発するのには、呆れました。

 演奏終了後、一緒に行った知人に、『バリバリうるさかったね』と言い、後ろを見たら、なんと婆ちゃんがサンドイッチを食べていました。

 そう、この「バリバリ」音は、自分の荷物の中で、サンドイッチのプラスチック包装を空ける音だったのです。私はその場で地蔵と化しました。

 演奏中に、生理現象以外で音を立てるのは、演奏している人に失礼だし、聴いている人にも迷惑です。それに、普門館は、本当にご好意で会場を提供してくれています。
「吹奏楽の甲子園球場」とも言われ、その舞台に上がるために、どのバンドも本当に一所懸命練習に取り組んでいます。

 全国大会の普門館の舞台に上がれる機会は、通常6回しかありません(中学校3年間、高校3年間)。マナーを守れない聴衆のために普門館が使用できなくなる可能性もあります。
 最低限のマナーは守りましょう。私からも本当にお願いいたします。



 さて、昨年(2006年)のコンクールは、高校の部のみを生で聴いたのですが、普門館は、聴く場所でかなり差が生じます。当然、一番いい場所は審査員席になりますが、1階でも2階でも、全く別物になってしまうことを踏まえておいて下さい。

 前半の部の座席は響きが悪く、破裂音が度々ストレートに耳を攻撃、『え、なんでこのバンド、こんな音になっちゃったの?』と、不思議に感じたバンドがありました。

 その後、2階席でお聴きになっていた、県立西宮高校の吉永陽一先生(私は吹奏楽界のスヴェトラーノフと呼んでます)にお会いしたので、(以下『』内が石本、「」内吉永先生)

『○○高校、どうでした?』
「いや〜、スコーンと音が飛んできて、気持ちよかったわ〜」
『え、私の聴いてる席では生々しい破裂音しか聴こえなかったんですが?』
「あ〜確かに1階は響かんわな〜」

 因みに後半の席では、チェレスタの音が抜き出て聴こえる席でした。
今までは2階席で聴くことが多かったので、はっきり聴こえるチェレスタの音には衝撃を受けました。


 では、遅くなったレポートという形になりますが、生で聴いた時の感想から書いていきます。
 特に印象に残ったのは下記のバンドです。

★前半の部 
 
長野県長野高等学校

【課題曲】
 各楽器の音の残し方が上手なので、違和感がなく、聴いていて非常に心地良かったです。やや、アンサンブルに不安定な部分もありましたが、伸びやかな演奏で、終わり方の可愛らしさが特に心に残っています。
【自由曲】
 課題曲を聴いていても、木管が『いいなぁ』と思っていたので、森田氏編曲版のスペイン狂詩曲という選曲は当たりだと思います。全体にスケール感のある演奏でした。Es.ClaとE.Hr、お見事でした。中間部の気だるさも、緊張感のある気だるさ(=演出とも言えます)であり、巧みな曲創りでした。一部不安定な部分もありますが、見事な演奏でした。私の中では金賞です。

明石南高等学校

【課題曲】
 ひそやかなTrb、好感が持てました。弱奏部が丁寧に演奏されており、音の絡み合いであるうねりも感じさせてくれました、ただ、強奏部が平坦になってしまったのが残念といえば残念ですが、土台になっているものがしっかりしているので、楽しめました。
【自由曲】
 吉永氏編曲のローマの祭、「ローマの祭と言えば吉永陽一」の編曲版を使用されていましたが、その表情もよく出ていました。多少荒い部分もありますが、すぐに立ち直っていたので、それ程気にはなりませんでした。結構お気に入りの演奏だったので、銅賞と聞き驚きましたが、私の心には、深い印象を与えてくれました。

埼玉栄高等学校

【課題曲】
 細部がきちんと見える、よく統制された演奏でした。中盤の部分の流れはさすがです。歌い方が見事でした。終結部はテンポが速めですが、終わり方に気を遣っているのが分かります。Tubaの残し方も心地よかったですやや音量を抑えた感を持ちましたが、自由曲を聴いてその理由がよく分かりました。
【自由曲】
 課題曲とはうって変わって、広いスケール感が伝わる演奏でした。課題曲で抑えていたパワーを発揮し、強奏部でも、全くうるささを感じさせないのは凄いです。

秋田南高等学校

【課題曲】
 やや速めのテンポでしたが、パワーを感じる力強い演奏でした。個人的にこの課題曲は、うねりを如何に表現出来るかという部分にこだわりたかったので、その「うねり」が感じられた演奏です。中間部もダレることなく、テンポキープ出来ていましたし、強奏部もうるさいとは感じませんでした。「圧」という字が浮かんでくる好演でした。

【自由曲】
 張り詰めた緊張感が聴き手にしっかり伝わってきました。言い換えると、「奏者の集中力が最高潮に達している」という感じでしょうか。Hrnの細かいタンギング、奏者の気合がしっかりと普門館に響き亘らせていましたよ、Goodです。やや力みが強くなって、粗雑な印象を与える部分が少しありましたが、見事な熱演でした。これも私の中では金賞です。

高岡商業高等学校

【課題曲】
 ちょっと頭からあっさり行ってしまったような気がしました。中間部では、木管の2nd・3rdがしっかりと支えており、聴いていて非常に心地よかったです。曲の〆方も印象的でした。

【自由曲】
 往年の高商サウンドを思い起こさせてくれる演奏でした。やや割れ目のTubが聴く人によって様々な印象を与えると思いますが、私は好きです。金管の音の響きに定評のあるバンドだけに、期待していましたが、期待通りの演奏を聴かせてくれました。Trpのsolo、気合はしっかり聴いている人に伝わっています、見事でした。これも私の中では金賞です。

★後半の部

愛知工業大学名電高等学校

【課題曲】
 雛壇最上段の打楽器が、非常に効果的でした。練習番号AからのTrp、聴いている人を楽しませてくれるヴィブラートでしたよ。金管のサウンドも十分に響いており、スケール感がある上に細部まで聴こえてくる演奏でした。

【自由曲】
 輝かしいブラス・サウンドと、それに負けずしっかりと木管も見せ場を作り、打楽器の活躍もある、構成的に優れた演奏でした。特に4楽章は、このバンドのカラーにぴったりと合っており、色々な意味で選曲が良かったと思います。HrnとTuba、心から拍手!

柏高等学校

【課題曲】
 期待していた通り、頭から『おっ!』となりました。しっとりと歌い上げた後、練習番号Aへ繋がる十六分音符の重さ、好き嫌いはあると思いますが、私は好きです。中間部のHrnの歌い方はGood!練習番号Mからの金管の響きは秀逸でした。以降のTrp、Trbのベルアップが効果的であり、印象に残りました。曲の締め方もTubが残る響かせ方で、私好みでした。

【自由曲】
 演奏が終わった時に、「柏にしては意外な曲だったね〜」と、後ろに座っていた女子高校生のグループが言っていましたが、私も自由曲を知った時、『へぇ〜、らしくないっちゃぁ、らしくないなぁ』と、正直思いました。演奏は申し分ないものになっており、これまた期待を裏切らない、いい演奏だったと思います。
 マレット系打楽器、Good!!聴いている途中、『こういう爽やかな柏もいいなぁ』となったのを覚えています。楽しさの伝わる演奏で、最後の上下二手に別れたシンバルの万歳シーンが印象的でした。
 ただ、私が聴いていた席の都合もあるのでしょうが、万歳で終わっているだけに、シンバルの響きを最後まで聴きたかったです。シンバルの音が消える前に拍手が起きてしまったので、それが楽しめなかったのが残念でした(でも、この演奏なら仕方ないですね)。

1990年代から、フライング拍手が横行し始めてしまい、その曲の大事な部分を聴衆が台無しにしてしまう事が結構多いので、聴く方も少し気を遣っていただきたいと思います。


岡山学芸館高等学校

【課題曲】
 冒頭のCla、非常に好感が持てました。この曲全体を通してですが、Hrnに心から大拍手!アレグロ部分は、やや荒めになってしまう(この曲のHrn、何気に難しいです)のは仕方ないと聴き手に感じさせてくれるまでの音色でした。中間部のHrn、も〜痺れっぱなしでした。

【自由曲】
 ローマの祭三連発のトリは、アイーダ・トランペットが登場。『ほぉ!』とがっちりと聴き入りました。木管楽器の扱いに特徴がある森田氏編曲版を使用していましたが、『木管がちょっと鳴る金管で埋めてしまっているかなぁ』という感じがありました。が、私はこの演奏が気に入っています。
 課題曲、自由曲共に、ピッチの不安定さや、バランスを失って荒めになってしまう部分があったりしましたが、私には強烈な印象を与えてくれた熱演です。審査結果発表を聞いた時は、『えっ!!!』と絶叫してしまいました。


安城学園高等学校

【課題曲】
 非常に柔らかなサウンドで、「安城サウンド健在」をうれしく思いました。伸びやかな曲創りで、活気に溢れた演奏に好感が持てました。Tuttiから楽器ごとへ繋がっていく部分も、受け渡しがきちんとできており、清流のように自然に流れている演奏でした。

【自由曲】
 序曲系をコンクールで取り上げる機会が多いバンドですが、今回は「天国と地獄」。冒頭の金管の華々しいサウンドの中に、しっかりと歌いこまれた木管が意思を持って滑らかに主張していました。中間部のFl soloは惚れ惚れとしました。カンカンに関しては言うことなし。これまた審査結果を聞いた時に『えっ!』と絶叫してしまいました。私の中では金賞です。

狭山ヶ丘高等学校

【課題曲】
 冒頭部の木管がやや無機質に感じられますが、コン・アニマから奏者の緊張もほぐれたせいか、突然別バンドのように生き生きとなりました。木管楽器の繋ぎの部分も流れるように引き渡されており、好感が持てました。ただ、音の処理が曖昧になって、『ん?』と感じた箇所もあります。でも、非常に伸びやかな演奏でした。

【自由曲】
『いつかは狭山ヶ丘もやらなきゃならない曲でしょ?』と思っていたダフニスとクロエ、やっと聴くことができました。
冒頭部でちょっと不安定な部分がみられましたが、すぐに立ち直り、独自の「狭山ヶ丘サウンド」を披露してくれました。個人的に『いつもサウンドの真ん中の部分が聴こえず、薄っぺらいという印象を受けちゃうんだよな』だったんですが、今回はそれが充実していて、『初めて安心して聴けた!』と喜んだことを覚えています。最後のキメは、賛否両論あるでしょうが、私は大好きです。これも審査結果発表で驚きました。私の中では金賞です。

磐城高等学校

【課題曲】
 うねりを感じさせてくれる見事な演奏でした。だらけがちになる中間部もしっかりと緊張感を維持しており、厳かな木管には脱帽です。

【自由曲】
 鬼気迫る演奏という言葉しか浮かんでこない、実に素晴らしい演奏でした。歯切れの良い木管のサウンドで、この気迫、凄いというしかありません。Hrnのベル・アップも効果的で、手放し大絶賛の演奏です。


(2007.01.20)

石本和冨プロフィール:
Ishimoto Kazufumi

自己を見つめ直すための長い旅を終えて、2007年1月に再び吹奏楽界に舞い戻ってきた伝説の吹奏楽スーパーバイヤー。アメリカをはじめとする多くの吹奏楽関係者とのネットワークを駆使し、世界中から新旧の吹奏楽作品をチェック、独自の視点で、吹奏楽ファンのための作品を紹介し続けることを自らの使命とする男。自身もテューバを吹きで、ここ数年はスクールバンドの指導なども行なっており、現場を知り尽くした者だからできる、曲選びや演奏のアドバイスには高い評価を得ている。
 ちなみに、今や伝説となった「ヨーロピアン・ブラスバンド選手権1992」に収録されているスパーク/ドラゴンの年を、「鼻血ドラゴン」と名付け、型破りな大量発注枚数でメーカーに再プレスさせ、このCDを日本全国に行き渡らせたのも実は彼だったり、アンサンブル・コンテストで人気の高いG.リチャーズ「高貴なる葡萄酒を讃えて」が収録されたロンドン・ブラス演奏のCDを廃盤から救い出したのも、実は彼なのである。その他、アメリカ海兵隊バンド「5枚組ボックス」など、ライナーノーツの執筆も多数あり。吹奏楽ファンにとって、実に頼りになる人物なのである。

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